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大山倍達マニアック検定

大山倍達著 「闘魂」 初版/改訂版(1972年)

JUGEMテーマ:空手
 
 さて、当ブログでは大体3つのカテゴリで運用されており、雑誌や書籍の紹介、古資料の発掘/書き起こし、そして調査/研究となっています。 この内、前の2つはいくらでもネタがあるのですが、調査/研究となると、下準備として関連資料を集め、時系列に並べ替え、記事に起こすという手間がありますので、そんなにサクサクと書けません。
 現在調査を進めているネタは、第1回全日本大会と東勝熊、そして渡辺勇次郎です。 第1回全日本と渡辺勇次郎に関しては、まだいくつか欲しい資料が足りませんが、東勝熊に関しては大体揃いましたので、来月中には書きたいと思います。

闘魂初版(青).jpg
「闘魂」初版

 という事で、今回は1972年に発売された大山倍達著「闘魂」をご紹介します。 当時の大山倍達本は、ちょうど「出せば売れる」時代になりつつある頃ですので、私の手元にある4冊の「闘魂」で一番新しい物は、32版目となっています。 増版が何部かは知りませんが、ミニマムの3000部で計算しても10万部弱は発行されたという事になりますね。 ちなみに大半の武道書は初版刷りのみだったりしますので、全国の書店数よりも少ない3000部〜8000部しか現存しなかったりします。 一番良いのは「○○スポーツシリーズ」みたいな1シリーズの中に入っちゃう事ですね。 これだと偶に改訂とか新装されますが、割と長い事書店に残ります。

 さておき、「闘魂」に話を戻しましょうか。 劇画「空手バカ一代」が前年より連載開始しましたので、表紙には「空手バカ一代」とあります。 しかし、「空手バカ一代」銘打って居ても、相容れない描写も多く、つのだじろう先生から影丸譲也先生に筆が変わるまで、あまり参考にされませんでした。 多分この本が脚光を浴びたのは、劇画で引用混じりで取り上げられた、クレイジー・ジャックのエピソードと、芦原英幸先生のエピソードからじゃないでしょうか。

ジャックサンダレスク.jpg
ジャック・サンダレスク

 大半は武勇伝ですが、後半に纏めて弟子たちのエピソードがあるのがこの本の特徴です。 戦闘描写なんかも考えさせられる物があると思うんですけどねぇ。 打撃に拘らず、握力を武器にしたりとか。 そう言えば、元極真ニューヨーク支部長のオーガスティン・デメロが赤の他人であるかの様に酷評したりしてますねw デメロ氏については既に書きましたので、当ブログ内を検索して見て下さい。
 ちなみに、大山総裁とジャック・サンダレスク氏とは、組手はやっていても、本書で語られる様な決闘はしていない模様。

闘魂旧版(赤).jpg
値段改訂後の「闘魂」(旧版)

 この「闘魂」は旧版(青/240p/500円)と旧版(赤/240p/650円)、そして改訂版(258p/950円)の3種類があります。 旧版は値上げに伴う色違いなので、ひょっとしたらオイルショックが関係しているかも知れません。 そして改訂版は表紙からは「空手バカ一代」の文字が消え、「闘魂」の字も変化しています。 中身の方は、写真が色々変わってたりとか、とあるエピソードがごっそりと削られ、他のエピソードと差し替わってます。 こちらの方は後述します。 しかし表紙の写真を見ると時代を感じますね。 ハワード・コリンズ先生が本部にいた頃ですので、72年までの写真だと言うのがよく分かります。 それではまず、目次から…。

闘魂改訂版.jpg
1980年出版の改訂版

目次
まえがき
I 挑戦
    ーアメリカ各地で炸裂した、マス・大山の空手神技
(1) 日本武道の誇りをかけて
(2) "八百長レスラー"として
(3) 名乗り出た全米一の強豪
(4) 身ぶるいとまらぬ恐怖
(5) 初めて名乗る"マス・大山"
(6) 予期しない"必殺技"
(7) アメリカの病根がここに

II ギャングと女と道場破り
    ーあやうし! ニューヨーク・ギャング団の魔手がのびる
(1) リングの上の恨み
(2) 月明りにうかぶ七人の男
(3) 全裸パーティの美女たち
(4) プレゼントされた金髪女
(5) ユーゴ系巨漢の挑戦

III 猛牛との戦い
    ー"牛殺し"の異名、ラテン・アメリカにとどろく
(1) 足はまっすぐ屠殺場へ
(2) ふっとんだ巨牛の角
(3) 悪条件下での失敗
(4) アメリカ牛に必殺の二段打ち
(5) 闘牛場での一騎打ち

IV 国王陛下のカラテ
    ーゲリラにそなえてはげむ、熱砂の国の空手ブーム
(1) 空港で待っていた男
(2) 国王、王妃陛下に拝謁
(3) アラーの神のご加護

V 空手を志して
    ー特攻隊員として、いちどひろった命を、武士道にささげる
(1) 初めての師「李」さん
(2) 夢に終わった空へのあこがれ
(3) "神風特別隊員"こそわが願い
(4) 暴力団との決闘
(5) 耐えきれない山籠りの孤独感

VI 世界を相手にしてこそ男
    ー東洋思想の使者として、"空手バカ"の本分をつくす
(1) 大至急"空手マン"を送れ
(2) 殺人パンチに耐えて
(3) 空手バカの"ハラキリ"
(4) 東洋思想の使者として

VII 弟子、友、師
    ー弟子たちの信頼と、友や師の愛のムチこそが私のささえ
(1) 忘れ得ぬ弟子たち
(2) 札束か、友情か
(3) 毛利先生と私
(4) 南面の竹ヤブに名器生まれず


 この目次自体は旧版も改訂版も変わりません。 しかしよーく見るとページ数が変化しています。
 最初の変更箇所は「(3) 名乗り出た全米一の強豪」で、前座の演武内容について触れていた箇所が大きく増え、遠藤幸吉氏とサンドウィッチを食べに行ったら、アイスクリーム・サンデーが出て来たとか、瓶切りを見せて「ゴッド・ハンド」と呼ばれたというエピソードが追加されます。 旧版では「ゴッド・ハンド」と呼ばれたエピソードについて、実にシンプルに語られていました。

 前座エキジビションの試し割りはおおいに受けた。 たいていは、板割り、石割りであったが、観客の中から飛び入りで出てもらって、私の正拳のタコをハンマーでたたかせたりした。 私は弟子や妻に、正拳をハンマーでたたかせて、当時はタコを大きくしていたのだ。 私には大したことではないのだが、アメリカ人たちには信じられないことだった。 キリスト教を宗教にしているアメリカ人は、「神」という名を軽々しくものごとにつけたりはしない。 その彼らが、私の手をを、「ゴッド・ハンド」(神の手)と呼んで新聞に書き立てた。

ルーテーズサイン入り.jpg
ルー・テーズから大山倍達に贈られたサイン入り

 瓶切りの記事を書いておいて言うのも何ですが、実は私個人としては大山総裁が瓶切りを見せたのは1953年以降ーつまり2度目の遠征からでは? と思っています。 というのも、1953年以前で瓶切りのや「神の手」の話をしている記事がまだ見付かっていないからです。 それに「神の手」という称号がクローズアップされるのは、「空手バカ一代」以降だったりします。

 では、次なる箇所。 「(3) 空手バカの"ハラキリ"」にある、黒崎健時先生のエピソードです。 こちらのエピソード自体に違いはありませんが、旧版では「黒川」という仮名になっていました。 改訂版からは「黒崎」と実名になっています。 黒崎先生のエピソードの前に、加藤重夫先生のエピソードがあるのですが、そちらは「加山」という仮名になっており、改訂版でもそのままでした。 何故黒崎先生だけ実名に戻ったのか? それは謎のままです。

 で、その次、中村忠先生の人柄に触れ、通産省や製鉄会社からウチに就職しろと言われたという、オールド極真ファンにはお馴染みのエピソードがありますが、そこに変更箇所が。

旧版
 自民党の三木武夫先生から、"中村を通産省に入れてはどうか"というお話や、当時八幡製鉄の藤井丙午氏(現・新日鉄副社長)が、"うちの会社にくれ"と嘱望されたこともあった。

改訂版
 自民党の三木武夫先生から、"中村を通産省に入れてはどうか"というお話や、当時フジ製鉄の徳永久次氏(現・新日鉄専務)が、"うちの会社にくれ"と嘱望されたこともあった。

 どちらが正しいのか? と問われれば、恐らく旧版の方が正しいだろうと思われます。 何せ言われた当の本人である中村先生が自著「人間空手」で書いてますからね。

 …正師範代である私は、率先して演武を披露した。 それをつぶさに見ていたのが、当時の八幡製鉄の副社長、藤井丙午氏であった。
(中略)
 翌日、大山先生に呼ばれていって、驚いた。 毛利会長を通じて藤井さんが「中村という青年をぜひ八幡製鉄にほしい」と打診してきたというのだ。 「それが嫌なら、通産省からの話もあるから、どちらかに決めるように」とも毛利会長は付け加えたという。

ジョンブルミンサイン入り.jpg
後に「空手バカ一代」に登場するジョン・ブルミン

 「闘魂」には大山総裁が中村先生を引き留めたかの様に書いていますが、中村先生の述懐では、自分から断ったとあります。 今となってはどちらが真実か分かりませんが、大山総裁から見ればそれほど中村忠という希有の人材を手放したくなかったという事でしょうし、中村先生から見れば、それほど自分は空手に賭けていたのだという事でしょうね。
 そして、旧版では中村先生のその後に期待を寄せていた文章が、改訂版ではアメリカの極真連盟弱体化の真相と中村先生退会の話へと差し替えられ、時の移り変わりを感じさせます。

 続いて、有明省吾のエピソードが語られた後に、旧版では葦原という弟子のエピソードに移ります。 これはまぁ、お分かりの通り、芦原英幸先生ですね。 本書掲載のエピソードは「空手バカ一代」でも触れていますので、よく知られているかと思いますが、この当時の大山総裁が芦原先生をどう評価されていたか分かります。

 葦原という。 みるからに空手家然とした、やせ型の眼光ケイケイとした青年である。その目はいつも殺気をおびていて、じょうだんひとついうにも、考えながらいわないと、なにがとび出すかわからないといった感じの、気性の激しい男だった。 運動神経は抜群であり、素質にめぐまれていたためか、入門して一年で初段、二年目には本部道場の師範代になっていた。
 気性の激しいというよりは、正義感に強いというべきだろうか、まるで、私の青年時代を思わせるかのように、短気なところもあり、不正や、弱い者いじめなどをみたら最後、トラのように襲いかかるといった男であった。

 実際の芦原先生は指導員になるまで、ここまで順風満帆では無かった様ですがさておき、破門に至るまでのエピソードは「空手バカ一代」でも有名な美談ですね。 ただし、現在判明している破門の真実とは少々違いますがw
 
 しかし改訂版では芦原先生のエピソードは全部差し替えられてしまいます。 どうなってしまったかと言うと、ブラジル支部長、磯部清次先生のエピソードになってしまいました。 この頃の大山総裁は、磯部先生が結婚されていない事を心配している様で、「そろそろ身を固めて欲しいと思っているが」と書いています。 そして磯部先生の返答はこんな感じでした。

 …彼は、私の心配など、どこ吹く風で、"本部の許可なく、絶対に結婚はしません"といってきた。 つまり、私の許可なしに……というのである。
 磯部清次とは、つまり、こういう男なのである。
 ここで、私はまた一本、磯部にとられた。

 ところが、こう返答した時点で磯部先生は既に既婚者となっていた模様です。 改訂版の5年ほど前には子供も生まれていたのですからw 以下、磯部先生の回想。

磯部  それで大会が終わってホテルに戻ったら、「(中略) しかし、キミィ、一つだけ足らないものがあるんだよ。 男はね、何をやってきても、結婚しなきゃ半人前だよ。 キミは素晴らしい人間だ。 しかし、キミは半人前だ。 結婚して過程をもって、男は初めて一人前になるんだ。 わかるか、キミィ」って言うから、「ここだ!」と。 その時、もう娘が10歳で息子が8歳だったのよね。 自分は家族を紹介するのはここがチャンスじゃないかなと思って、「実は、自分には子供が二人います」 「なにぃ? なんでキミは隠していたんだね! 隠すことなんかひとつもないじゃないかキミィ! 子供がいる? いいことじゃないかあ」ってなったわけよ。(中略)「キミ、男がいるのかね! いいねえ。 キミ、ワタシは3人とも娘だよ」って言うわけですよ。 そこまではいいんだよね。 「ところでキミ、上はいくつだね?」って言うから、「きたなあ!」と思ったわけだ(笑)。 「実は上が10歳で……」 「キミィ、いま何て言ったんだ!?」 「娘が10歳です」 「10歳!! キミがここに来て何年になるんだ!?」 「12年目です」 「貴様、来てすぐか! この野郎!! このワタシを10年騙しやがったなあ! ワタシはここに来る度に言っただろう。 嫁を連れて帰って来いって! その度にキミはワタシにこう言ったよな。 『極真のためにまだ頑張ります。 極真と結婚します』って。 よく言ったな。

 まぁ、その後の大山総裁は磯部先生の御子息(後に世界大会でも活躍しました)を連れて来させ、おじいちゃんの顔になっていたそうですw

闘魂帯付.jpg
右が〈改訂版〉と書かれた帯

 本書は1972年に出版され、4年後の76年(25版)には「サンケイ ブックフェア特選図書」として、同出版社のロングセラー80冊の1冊として選ばれています。劇場映画公開効果も相まり、正に絶頂期です。 しかし1980年11月に出た32版からは改訂版(改訂版表記は帯のみ)では既に触れた様に、変化が見られます。 中村忠先生と芦原英幸先生の退会ですね。
 退会者を排除する為の改訂は恐らくこの本が最初で、またその内書きますがいくつかの本が同じ様な憂き目に遭っています。 一時期は大会入賞者にもこのパージが広がり、過去大会の入賞者一覧に空白が多く見られました。 この時期の極真は鎖国化を強めており、極真系の佐藤塾も鎖国以前は大会に出場出来ていましたが、以降は出場出来なくなりました。
 一言で改訂版と言っても、場合によっては裏事情があるものです。


 という事で、今回は大山倍達総裁の「闘魂」を紹介しました。 「空手バカ一代」世代の門下生なら多分読まれているかと思います。 人によっては思い入れもあるでしょう。 しかし改訂版の事情を読み解くと、この瞬間に1つの時代が終わった事を実感させられます。
 まだ読んだ事の無いという方はこの記事を参考に、読みたい方を選択して下さいw

 それでは、また。


参考文献:
空手バカ一代 闘魂 ー拳ひとすじの人生ー 大山倍達著 サンケイ新聞社出版局 1972年
闘魂 ー拳ひとすじの人生ー 大山倍達著 サンケイ出版社 1980年
人間空手 中村忠著 主婦の友社 1988年
紙のプロレス公式読本 極真とは何か? ワニマガジン社 1996年


 






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コメント
芦原先生の本当の破門理由!?
凄そうですね〜w
  • サミ
  • 2011/11/04 12:56 PM
>サミさん

破門と言っても、本部指導員時代の話ですよ。 「空手バカ一代」では、馴染みのラーメン屋の為に暴力団に討ち入ったというのが破門(最終的な処分は無期禁足ですが、黒崎健時先生が間に入って計らったとか)の理由ですが、実際には酔って喧嘩して、警官まで伸ばしたという事でした。
後の除名処分と違い、こればっかりは芦原先生を擁護する事は出来ませんw

今のところ、聞いてる話では、
喧嘩→逮捕→警官を伸ばす→破門→黒崎先生に相談→指を詰めて詫びようとする→黒崎先生が大山総裁に掛け合う→無期禁足→バタ屋→禁足解かれ四国へ
という事らしいです。
  • Leo
  • 2011/11/04 10:18 PM
飲み屋のママに「そんなに酔ってだいじょうぶ?タクシー呼ぼうか?」
と言われたやつですねw。
これが架空の事で実際に禁足に成った理由が他にあるのかな?
と勘違いしてしまいましたw。

失礼しましたw
  • サミ
  • 2011/11/05 8:42 PM
>サミさん

いえいえ。
  • Leo
  • 2011/11/05 11:36 PM
ケンカ空手に続いて
二冊目に買った本です。

改訂版でそんなに内容が変わっているとは知りませんでした。

すごい訂正内容ですねw。
機会あれば古本屋で買ってみます。
  • もん爺
  • 2011/11/16 5:48 PM
>もん爺さん

はい、色々変わっています。 なので、旧版しか読んだ事無い人と、改訂版しか読んだ事無い人が話すと、互いに知らない部分が出て来ますw
  • Leo
  • 2011/11/18 1:53 AM
ラーメン屋襲撃事件の大山倍達(談)に「著書、闘魂で書いた通りだが…」とあり、
闘魂を購入したところ全く掲載されておらず不思議に思ったものですw
「改訂版」の字に嫌な予感がしましたw
芦原先生や添野先生が退会されてたなんて知らず道場に通ってたのですw
  • 朱子
  • 2011/12/07 6:33 PM
>朱子さん

あぁw 80年11月以降の入門なら知らなかった人は多かったかも知れませんねぇ。
「パワー空手」でも2号だけ取り扱って、後は全然扱わなかったですし、本屋で芦原先生の自伝を見て首を傾げた人もいたんじゃないでしょうか?
  • Leo
  • 2011/12/07 9:58 PM
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