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大山倍達マニアック検定

【レビュー?】大山倍達著「世界に賭けた空手-5000万人日本脱出への提言」(1976年)

JUGEMテーマ:空手
 

 さて、今回は大山倍達総裁の著作から1976年に出版された「世界に賭けた空手-5000万人日本脱出への提言」(潮出版)を紹介します。

世界に賭けた空手1.jpg





  本書はある意味奇書でしてw あぁ、いえ、別に稀覯書という訳ではありません。 出せば売れるという時代の大山倍達本ですから、今でも入手は難しく無いでしょう。
 でも当時リアルタイムで手に取った人はどう思ったんでしょうね、感動したのかな、それともポカンとしたのかな? イマイチ想像が付きませんw
 何せ空手家が外務省の資料を読みながら数字で世界情勢、または日本と海外の関係等を語っていくのですから、理念は判りますが、驚きですねぇ。 ちなみに本書カバーの耳にはこうあります。

私は空手一筋に生きてきた
 世界を駆けまわって、生死紙一重の勝負を幾度となく体験した。 そして、私は世界のマス・大山となり、世界に多くの友人を得た。
 本書は私自身の体験にもとづく一空手家の《ロマン》である。 数多い私の著作のなかでは初めての試みであり、日本の青年諸君への訴えでもある。

 そしてカバーの背面には俳優、ショーン・コネリーからの賛辞が。

鉄拳一筋に生きる執念と自信

マス・大山の《世界》はとてつもなく大きく
鉄拳一筋に生きる執念と自信に裏うちされている。
世界を駆け、一千万人の弟子を育成し
いかに自己を鍛え、心身ともに強くなるかを願う。
『世界に賭けた空手』には、マス・大山のすべてがある。
日本の未来と青年の生き方を示唆し、《夢》を語る。
その問いかけはずっしり重く
読者を感動させずにはおかない。
偉大なるマス・大山に賛辞を贈りたい。

俳優 ショーン・コネリー

世界に賭けた空手2.jpg


 多分コネリー氏は読んで無いと思うんですよねw 本書は英訳されてないし。 ただ、グリーティングカードのやりとりなんかはしてそうなので、「本を出すからコメントを」ぐらいの事は言ったかも知れませんねぇ。 祝辞を述べるのは珍しい話では無いので、最大限に譲歩して…編集の方で文章を付け足したんじゃないかなぁとw
 …まぁ、いいやw 要するに、日本の若者に対して「世界に羽ばたけ!」と説いた本なのです。
 時期は石油や資源問題(1973年)、そして公害、狂乱物価が取り沙汰された頃です。 前年には第1回先進国首脳会議が行われ、敗戦国だった日本は僅か30年ほどで先進国の仲間入りとなりました。 しかしオイルショックの影響からか、1975年2月の完全失業率が100万人を超えたという事もあり、折からの超能力ブーム、「ノストラダムスの大予言」等の終末論と、社会的な閉塞感があったのでしょう。
 本書の制作意図はその閉塞感の打破にありそうです。
あ、誤解されるとあれなので言っておきますが、今の移民問題とは性格が異なります。 日本から世界に出ようというのが本書のテーマであって、日本に受け入れようという話ではありません。
 では目次。

 プロローグ 世界に友人が多ければ世界観は変わる
    昭和三十年日本人にとって外国ははるかな国だった

 第一章 異人種同士いっしょになって遊べ
    人間が創造力・総合力によって競い合う時代
    世界は国という壁を打ち破らねばならない

 第二章 青年が働くためには夢とロマンが必要
    第一回オープントーナメント全世界空手道選手権
    師弟の秩序、先輩後輩の秩序

 第三章 全智全能を傾けて頼もしい人間たれ
    家族主義・個人主義・金銭主義
    極真会館三段以上は武人であり、武士である

 第四章 移民は占領ではなく同化である
    黒人統一国家に移民するという発想
    アフリカは万葉時代を迎えている

 第五章 二倍、三倍の努力をし精神と技術を磨け
    一夜明ければ大富豪という夢物語
    一時間乞食すれば一週間喰っていける

 第六章 日本は早めに移民教育に着手せよ
    空手武士道の本質は肉体修業を通しての精神修養
    灰色の人工都市、エログロ文物の氾濫する非文化国家

 エピローグ 世界に飛びだせ! 世界に賭けよ!
    明日の世界にはたす日本人の大きな役割


世界に賭けた空手3.jpg
漫画の挿絵

 さて、資料を使って数字で説明している本書ですが、例えばこんな感じに書かれています。

 昭和四十九年度版外務省編の『わが外交の近況』のなかに、オーストラリアにおける対日世論傾向調査の結果が発表されている。 これはオーストラリア市民四百人を、各州首都と神部等で選びだし、個別に、インタビューをしたもので、年齢は十五歳から六十一歳までである。

***

 ブラジル日本文化協会が、一九七二年に行った調査によると日系二世で政界入りしたものは百五十二人、小学校教師から大学教授まで数えると千七百三十九人にのぼっている。
 (1)政界ーー連邦代議士三人、州代議士七人、市長十一人、副市長十六人、市会議長十五人、市会議員約百人。 一九六九年ファビオ・安田氏は商工相として入閣した。

***

 まず、黒色人種のアフリカを東部、中部、西部、南部にわけて考えてみよう。
 東部アフリカとは、エチオピア、ソマリア、ケニア、ウガンダ、タンザニア、モザンピーク、マダガスカル、モーリシアスの八国である。
 エチオピアは最近革命があり、君主制を廃した。 面積は百二十二万平方キロで、日本の四倍足らずである。 紅海に面しているがアムハル高原を中心とする高原国で、首都アジスアベバも海抜二千三百五十メートルの高地にある。 人工は二千五百九十三万人、人口密度二十一人、コーヒーを主とする農業が国の主たる産業であり、金、プラチナ、マンガン、哲などの資源に恵まれながら、まったく開発されていない。 公用語はアムハラ語と英語。

 随所に空手の話、空手に関連した話は出て来るのですが、今挙げた様な部分だけ読むと何の本か判りませんねw これが私が「奇書」だと挙げる要因です。 いや、空手の話は結構載っているんですよ? 大山泰彦先生が永住権を取得した時のエピソードとか、海外の支部長とか。 でも目立つのは前述した様な各国事情なんですよねw
 割と真剣に5千万人を国外に、と考えている本なので、1年で50万人を移民させるには一日約1400人を国外に出さないといけない、みたいな事も書いてありますw ジャンボジェット機が20機は必要だろう、とか(ロッキード事件は丁度本書出版の年)。

 五十万人に対する予算は、二〜三兆円、国家予算の約一割をこれにあてることとする。 一人当たりの費用は四〜六百万円であり、このうち約三分の一を国内での教育費にあてる。 移民は十八〜二十四歳の建設、労働隊員を主力とし、特定の人員に対して、医師興行開発指導者、教師をつけることとする。 むろん移民対象となる国家との話し合いで、日本移民が集団としてその国家の開発事業にはいることを約束し、移民地区の基礎的整備、住宅建設、高等学校、専門学校、大学の建設、病院、保健所の建設などを前もって準備し、開発のための機械、道具類についても配慮しなくてはならない。 また、その国家との話し合いによっては、企業ぐるみ移民ということも考えられる。
(中略)
 また、開発は当初はあくまでも投資であり、見込みの狂いもありうる。 こうした場合の開発団の生活保証、あるいはあらゆる意味での援助をしなければならない。 また、その生産物について、当初十年は、日本か、相手国が買い取り保証せねばならない。
(中略)
 私の五千万人脱出計画の各地区への移民数は、
 南米、 三千万人
 豪州、ニュージーランド 五百万人
 中東地区 二百万人
 東南アジア 二百万人
 北米、カナダ 二百万人
 ソ連、蒙古 二百万人
 アフリカ 七百万人

 …と、ここまで読んで何かを思い出しません? そう1973年に小松左京先生が出版し、一大ブームを巻き起こした「日本脱出」ですね。 あの作品に出て来る"D計画"は日本人国外脱出プロジェクトだった訳ですが、元ネタは何となくこの辺りにあるのでは無いかなぁとw

世界に賭けた空手4.jpg

 後、もう1つの可能性。 これは完全に推論ですが、大山倍達総裁と官僚もしくは環境学者辺りと組んで、ゴーストライターをやっているんじゃないでしょうか。 本書は一個人が思い付きから調べて書くにはあまりにも規模が大きく、専門的過ぎなんです。 俯瞰で眺められる専門家じゃないと書けない様に感じます。 しかし間に上手く空手の話を入れているなぁと感心しますね。
 ところで、アメリカ格闘技界の重鎮、アメリカでテコンドーの父と呼ばれるヘンリー・チョウ先生の話が詳しく載っていました。 平たく言うと、当時学生だったチョウ先生にアメリカで空手を教えたらその後、約束を破って極真を名乗らずに、「コーリアン・カラテ・テッコンドー」を名乗っている、今では一大勢力だ、と。 まぁ、事実のほどは知りませんが。



 という事で、今回は大山総裁の著書「世界に賭けた空手-5000万人日本脱出への提言」を紹介してみました。
 現在とは世相も世界情勢も違いますので、現代の感覚で本書を批評するのは控えましたが、極論もあったりするので良書とは言えないでしょうねw しかし当時の世界を知る上では結構面白いんじゃないかな、と思いました。 私はそこそこ面白かったです。
 別の著作でも何度か大山総裁が書いておられましたが、韓国政府のテコンドー輸出話なんかも興味深いですよね。 今の韓流みたいですが、今も昔も国家イメージの向上には貢献していない様な気がしますがw まぁ、アメリカから見てアジア風の何かと言えば和風か中華風ですからねぇ。
 それでは、また。


参考文献:
世界に賭けた空手-5000万人日本脱出への提言 大山倍達著 潮出版 1976年
戦後史開封 〔昭和40年代編〕 産経新聞「戦後史開封」取材班〔編〕 扶桑社 1999年
戦後史開封 〔昭和50年代編〕 産経新聞「戦後史開封」取材班〔編〕 扶桑社 1999年







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コメント
お久しぶりです。
大山道場編の例の画像にびっくりしましたw。
それはそうとこの本買った記憶ありますね。
大山館長が執筆なさった本なので買ったは良いのですが
内容を見て訳が判らなくて一度見たきり見てないですw。
確か表紙の拳が格好良くて購入したと思いますw。

中3か高1でしたが内容ちんぷんかんぷんでしたねぇ。
ではまた
  • サミ
  • 2012/04/04 3:24 AM
記憶も曖昧ですが、このような本を読んだと思います。別の本かもしれませんが、やけにブラジルへ行くことを推奨されてたような。
感化された高校生の頃、親兄弟にブラジルに行きたいと言ったら、バカかと一蹴されました。
  • 天然自然
  • 2012/04/04 7:25 PM
>サミさん
大山道場編、お楽しみ戴けたなら何よりですw

まぁ、本書は異色ですからねぇw

>天然自然さん
そうですね、基本的に大山総裁は昔からブラジル押しです。
戦前生まれの大山総裁は、ブラジル日系人家庭に残る古き佳き日本に感銘を受けた、というのもあるでしょうが、もう1つは大きな可能性のある国だ、というのが最大の理由かと思います。
何度か語っていた(書いていた)話にブラジルの日系二世の方がこう言ったというエピソードがあります。

「… 私は、ブラジルこそは"夜明けの国"だと信じています。 たとえてみれば、英国は午後三時の国でしょう。 アメリカは、午後一時の国です。 そして日本は、正午の国といえるでしょう。 これに対しブラジルは、夜明けの国であり、未来が広がっています」

これに感銘を受けた大山総裁は、本書の中でもブラジルを「朝焼けの国」と書いていました。 なので、私もアデミール・ダ・コスタやフランシスコ・フィリョを筆頭とするブラジル勢の活躍を見る度に、この話を思い出しますw
  • Leo
  • 2012/04/04 9:38 PM
ブラジルは芦原英幸氏が派遣される予定だったんですよね。行ってたらどーなってたかな。
  • やいや
  • 2012/04/05 8:36 AM
>やいやさん
代わりに小倉正一郎先生が四国に行ったかも知れませんねぇ。
そしてサバキは「流水の組手」と呼ばれブラジル支部の技術として有名にはなるものの、システムとしては完成しなかった可能性…もありえるかも知れません。
「空手バカ一代」から始まった組織内の軋轢とも無縁になり、独立せずとも極真も割と円満な組織運営になったりして。

まぁ、今の日本の空手諸流派が20は減りそうですw
  • Leo
  • 2012/04/05 9:03 PM
ロマンだなあ
  • あばらや
  • 2012/05/01 11:42 PM
>あばらやさん
この本を久々に読み返したら、「日本沈没」が読みたくなったので、現在通勤中に読んでますw
昨今はこういう大きなロマン溢れる話を聞かないので、今読む方が面白いかも知れませんね。
  • Leo
  • 2012/05/03 8:43 PM
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