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大山倍達マニアック検定

【レビュー?】大山倍達著「マス大山の正拳一撃」(1994年)

JUGEMテーマ:空手
 


 おそらく人生の悩みのほとんどは極真空手で解決するのではないか。若かった私は思ったものだった。いや、皮肉ではない。その考えは今もあまり変わっていないからだ。
 大山倍達。それに彼が築いた王国、極真会館にはそれだけの説得力があったのだ。

 とは作家、深町秋生先生の言葉。


正拳一撃3.jpg
出版前の広告

 今回紹介する大山倍達著「マス大山の正拳一撃」はかつて極真の機関誌「月刊パワー空手」誌上で、1979年8月号より94年6月号までのおおよそ15年(まえがきには17年とありますが、これ以前は確認出来ませんでした。 そもそも掲載媒体が創刊されたのが1978年だw)の長きに亘り連載された、読者からの質問に大山倍達総裁が直々に答えるという人気コーナーから質問をピックアップし、テーマ別に分類し再掲した本です。 出版前に大山総裁が亡くなられた為、この本ともう1冊の本が遺作となります。





  元々は毎月沢山送られて来る極真門下生、ファンから大山総裁への便りをコーナー化した物で、これにより質問を一元化し、多忙な大山総裁の負担を軽減しようとした企画だったらしいです。 なので当初は「読者質問箱」と題しており、様々な質問が寄せられていました。 まぁ、後に悩み相談の様な質問が増え、深町先生が評した様な様相を呈して行くのですが。
 ちなみに最初の質問は大山総裁の連載記事「拳の眼」でこう書いたのに、大会(第11回大会)ではこうだった、嘘じゃないか! と激怒するファンの手紙ですw 何が違ったかと言うと、世界大会出場者の選考基準と歴代王者が最低4名が出場と前宣伝していたのに出なかったというのに加え、判定問題ですね。 一部回答を書くとこんな感じです。

正拳一撃1.jpg
「正拳一撃」第1回

 …私としてもファン同様、歴代チャンピオンには是非出場してもらいたかったし、要請もしたのだが、彼らの事情をしっては、首に縄つけてまでとはゆかなかった。 最低3ヵ月はカラテ修業にだけ打ちこみたいという彼らの気持ちは、私にはよくわかるのだ。 一度チャンピオンの座を得たものなら出場する以上、そのチャンピオンの名に恥じない闘いをしたいというのが人情だろう。
 
 さておき本書の紹介をしましょうか。
 本書は1種類ですが、帯が2種類あります。 1つは生前作られた物で、もう1つは没後の物。 私は海外に居て帰国後の6月頃購入したのですが、旧帯の上から新帯が掛けられてました。  この「正拳一撃」にはどういう意図があったのか、大山総裁によればこうです。

正拳一撃4.jpg
最初の帯

正拳一撃5.jpg
没後の帯

 あるとき、パワー空手の編集部のほうから、私が若者の相談の手紙に対して返事をするその内容を、記事として連載したいという話があった。
 時代はこのように自由になっているが、若者たちはかえって自分の生きる方向がわからなくなっている。 だから、私がいつも道場や合宿、手紙などで若者と接しているときのように、ずばずばと思ったとおりに返答してみてはどうか、というのである。
 たしかに、現代の若者は、あまりの自由の放漫さに溺れ、自分を見失っている。 しかし、そのなかにも、厳しい統制、自己犠牲を求めて真剣に生きようとする若者も一部にはいる。 全体としては、甘やかされ、放縦に走ったりしているが、私のところに相談を持ちかける若者のほとんどは、これであhいけないと、真剣に回答を求めてきているのである。
(中略)
 …こうして、「正拳一撃」の連載は始まった。 連載が始まると、若者たちは、その頁を楽しみにしているということを聞いた。 大会の前後などに休載すると、抗議が殺到するということであった。 その理由は、強い父親がいなくなったためであるという人もあった。 同じ理由からか、父親の世代からも、私に賛同する人が多かった。

 まぁ、私もその楽しみにしていた若者の1人でしたが、最大の理由は面白かったからで、強い父親がどうとかってのは考えた事無かったですねぇw

 では目次。

第1章    強いということは、魅力があることだ
    だから強くなる必要がある

第2章    ハンディキャップが、男を男にする
    人間を強くするもの、それは叡智

第3章    恋愛・勉強・進路

    恋愛問題にかぎらないが、なにごとも過剰はいけない

第4章    修業とトレーニングにアドバイス

    力のない空手は蠅の喧嘩だ

第5章    極真批判、カラテ批判、大山批判に答える
    なぜ鷹の集団か。 最強だからこそ鷹が集まってくるのだ

第6章    他の格闘技、およびニセモノ武術

    オレは強い、と口だけなら誰でもいえる

第7章    極真と他流派、および拳法
    五〇〇人組手? 笑わせるな

第8章    空手の技について聞きたい
    極意はそう簡単に身につくものではない、ということだ

第9章    素晴らしき人々
    情熱が、素晴らしい人と引き合わせる

第10章    内弟子志願、入門志願
    刑務所に入ったと思えば、なんともない

第11章    マス大山へ私的な質問

    心のリズムとメロディを失ったら、人はなにもできない

正拳一撃2.jpg
最後の「正拳一撃」

 いやぁ、目次だけで今ならクレームが来そうな内容ですねw  当時読んでいても「コレ、いいのかなぁ(苦笑)」と思ったものですが、快刀乱麻とばかりに何でもビシバシ斬る大山総裁、斬られた側は腹立たしいでしょうが、私は好きでしたねぇ。 基本的には肉体論での返答なんですが、人を発奮させるその言葉は非常に素晴らしいです。 例えば本書の最初のお便り、気の弱い兄が喧嘩慣れした弟に対して何も言えないという悩みに対して。

 …男と男の関係は、力には力で対抗しなくてはいけない。
(中略)
 強くなって寡黙な男になれ。 強くなったからといって、暴力で弟を屈服させる必要はない。 寡黙で、内に強さを秘めた男になれ。 そうなれば、弟もわかってくる。
(中略)
 私が若い道場生に言うことだが、一度叩かれて黙っていると、何回でも叩かれる。 男には、一発叩かれたら、二発叩き返すという覇気が必要だ。 君の場合、長い間、弟の暴力的な態度に屈してきた。 このままでは、いつまでたってもこの関係は改まらない。 だから、とにかくカラテを一生懸命やって強くなること。 暴力的な弟が尊敬するくらい強くなることだ。 君が感じている悔しさや屈辱感をバネにして、死ぬ気で稽古すればかならず強くなれる。 がんばってほしい。

正拳一撃6.jpg

 後、ソリューションが明解なのが特徴ですよね。 まずは強くなれ! この一点に尽きますw 第1章からいくつか列挙しましょうか。

・ …兵法の極意は、戦わずして勝つことだ。 喧嘩をしないで勝つことが、一番だ。 ただし、強くなくては、尊敬されない。 強いということは、魅力があることだ。 だから、強くなる必要はある。 外人よりも強くなる方法は、やはり極真カラテを習うことだ。

・…自信を持つために、極真カラテをやりなさい。 そうすれば、おのずとわかる。

・君は、そいつを叩かなくてはだめだ。 世の中には、口で説得してわかる者と、説得してもわからない者がいる。 君がいま、使わなくてはいけないのは力だ。 だから、いきなり物も言わずに叩きのばしてしまえ。 そういうのに限って一度のばされると、君のいうとおりになる。

・…しかし、カラテをやっていて喧嘩ができないなら、なんのためにカラテをやっているかわからないではないか。 カラテはつきつめれば、喧嘩に強くなるためにやるんだ。

しかし常に空手を奨めている訳でも無く、質問者の状況によってはこう答えています。

・…君がいまやらなければいけないのは、勉強だ。 勉強が主で、カラテは副にしたほうがいい。 学校の勉強は大事です。 一生懸命勉強して、優秀な成績をあげてもらいたい。 稽古はいつでもできるのだから。

・受験勉強が苦しいから、武道に逃げるとするなら、もし武道が苦しければ、そこからも逃げる。 そうすれば、君には何も残らない。 逃げてはいけない。 苦しさにぶつかり、それを突破して行くところに、男の価値がある。

 無論人生相談ばかりでは無く、空手の技術やトレーニングなど、回答は多岐に亘る訳ですが、第5章には地方支部に学ぶ門下生からの告発が寄せられたりもしています。 この件に関しては当時読んでいた人はご存じだと思いますが、実際に本部が動いて関係者を処分しました。 この辺りから支部長引退制度の話が出て来たのかな。

 …いったん支部長になれば、終生、支部長でいられるというのは、極真が今後も発展を続けていく上でよくない。 支部長という地位にぬくぬくとして、極真をさらに大きく発展させる意欲のない支部長は、なんらかの制限なり規則なりを作って、新陳代謝できるようにしていかなければならない。

正拳一撃7.jpg

 極真批判への回答や、他流への回答も面白いんですけど、長いし、角が立ちそうなのがチラホラあるのでバサッと割愛しますw
 そうそう大山総裁は表面的な部分ばかり見られがちですが、ちゃんとこういう事も言います。 これを最後の締めにしましょうか。

 寸止めであれ、なんであれ、ひとつのことを一生懸命やるということは、素晴らしいことだと思う。 カラテに限らない。 相撲であっても、柔道であっても、剣道であっても、ボクシングでも、キックでも同じだ。 なんでもいい。 一生懸命やっている人間を私は尊敬する。 寸止めだからといって軽蔑するようなことはない。
 それに、寸止めカラテでうまい人は、直接打撃制でもうまくなる。 寸止めがいけないということは一つもない。 私も、むかし松濤館で寸止めのカラテをやった。 だから寸止めがどういうものかよく知っている。
 カラテは肉体的な強さと精神的な強さを追求するのが目的だから、直接打撃制であろうと、寸止めであろうと、精魂をこめて一生懸命やることが大切だ。 それが「士魂空拳」である。 一生懸命やってください。

 

 という事で大山倍達著「マス大山の正拳一撃」でした。 先に書いた通り、私もこのコーナーのファンでして、大会の時以外はここか、「拳の眼」を先に読んでたかな。 やっぱり大山総裁の言葉、というのは大変面白く、力を感じますよね。 皮肉屋は「お前が言うな」みたいな感想を持つ事もあるでしょうが、色々経験して来た大山倍達だからこそ言える事もある訳で、これを他山の石とするか、自身の中で消化するかで随分変わると思います。

 本書に再録されていない質問、回答の中にも沢山面白い物、感銘を受ける物がありましたが、その集大成とも言える本ですので、未読の方は是非。 あ、でも他流派の方はちょっとオススメしませんw
 それでは、また。


参考文献:
月刊パワー空手 1979年9月号 パワー空手出版社 1979年
月刊パワー空手 1994年6月号 パワー空手出版社 1994年
マス大山の正拳一撃 大山倍達著 市井社 1994年
プロレス・格闘技 超"異人"伝 リングの外でもスゴい人々 洋泉社MOOK 洋泉社 2006年









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コメント
私も学生時代、極真空手に憧れがあったのですが、直接打撃制で、顔面殴打はなしと知ってはいましたが、万が一顔面に突きが入って歯が折れるのが怖かったのです。そこで「極真を始めたいのですが、歯が万が一折れたらと思うと不安です」とパワー空手の質問コーナーに投書しました。おそらくこんなくだらない質問、却下されるだろうなと思っていましたら、なんと大山総裁が返答をくださいました!

記憶を頼りに書きますが
「男なら、歯が折れることくらい恐れてはいけない。歯が折れるくらいなんともないよ。私の奥歯は左右両方とも、アメリカでレスラーと戦ったときに折れてしまった。極真空手をすぐはじめなさい」
とご返答いただきました。これではじめないわけには行きません。早速近くの支部に入会しました。ただ、さすがに極真空手の練習は厳しく、一年弱ほどで卒業研究が忙しくなったのを理由に足が遠のいてしまいました。私は情けない道場生でしたが、師範の方や、道場生の方々の強さや、毅然とした態度は尊敬しております。有名な選手でなくとも市井の方々で黙々と修行され、強さを秘めている方々がいるという事を知ることが出来ただけでも良かったかと思います。
  • masamasa
  • 2012/06/08 11:13 AM
>masamasaさん

おぉ、それはまた貴重な体験を。 というか羨ましいですw
その内「月刊パワー空手」のレビューもやるつもりですので、お便りを見付けてしまいそうw

それにしても、大山総裁のやる気にさせる一言は凄いですねぇ。

  • Leo
  • 2012/06/08 10:04 PM
いや〜、昔の極真て何でこんなに魅力があるんでしょう!?

Leoさんには極真、総裁愛を感じます。

これからも面白い記事書いてくださいね!!
  • うす!
  • 2012/06/10 10:15 PM
>うす!さん
あ、いえいえ、ありがとうございます。
昔の方が面白いのは、あまり優等生っぽく無いからかも知れませんね。
  • Leo
  • 2012/06/11 9:02 PM
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