calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< September 2017 >>

categories

無料
無料
無料






archives

大山倍達マニアック検定

【レビュー?】松田隆智著「謎の拳法を求めて」(1975年)

JUGEMテーマ:格闘技全般
 

 えー今回は当ブログ初かな、中国拳法ネタです。 「先に太氣拳やれ!」とか言われそうですが、この方の本、「謎の拳法を求めて」(1975年)を紹介します。  新版、改訂新版というのもあるみたいですが、手元にあるのは旧版のみです。

謎の拳法を求めて1.jpg

 著者はウチでも「近代カラテ」の記事で何度か登場してますね、松田隆智先生です。 かつて「週刊少年サンデー」で連載していた「拳児」の原作者であり、それ以前に連載していた「男組」では中国拳法の知識を提供しています。 武道界での功績はとりあえず置いておきますが、サブカル/漫画界には多大な影響を及ぼしているんじゃないかなぁ。



 松田先生が紹介した中国拳法、八極拳の外門頂肘(頂心肘?)とか沖捶らしきものは拳法と全く無関係な漫画でも見掛ける事ありますし、近作だと「鋼の錬金術師」で主人公が使っていた肘技は八極拳のものでしたね。

謎の拳法を求めて2.jpg

 3Dポリゴン格闘ゲームに登場する中国拳法は正に松田先生の影響下にあり、セガの「バーチャファイター」シリーズで登場する中国拳法には燕青拳や八極拳(心意把の技も)、蟷螂拳がありますし(余談だが私はサラ使いで、コンボ池サラを良く使ってましたw)、コーエーテクモゲームスの「デッド・オア・アライブ」シリーズでは心意六合拳や陳氏太極拳(技の中には八卦掌もある)、バンダイナムコゲームスの「鉄拳」シリーズでは流名はあれですが、登場する技術に八極拳や心意六合拳の技がありましたね。
  まぁ、色々影響を与えているのだという事をご理解頂ければ幸いです。 それではまず目次。


第一章 評論篇
    道は理想でなく今必要なもの
    武道修業は精神修養になるか
    師と徒
    三年かかって良師を探せ
    白紙でなければ絵はかけぬ
    西洋武術と東洋武術
    理論武術と実戦武術
    幹と枝葉
    武道と禅

第二章    空手編
    空手時代
    空手源流考
    功夫ブームと空手ブーム
    ブルース・リーの虚像と実像
    試合は武術を骨抜きにする

第三章    古武道編
    古武道時代
    必殺剣法・示現流
    日本伝統の拳法
    柳生心眼流
    諸賞流
    神秘の大東流合気柔術

第四章    中国拳法編
    謎の拳法を求めて
    日本における中国武術観
    中国の破門
    太極拳について
    超能力と武術
    当て身の原理
    拳法の魂ー勁
    中国の忍術
    剣と刀
    ケンカ・真剣勝負・他流試合
    ボクシングと拳法
    自分の歩いた中国拳法の門派
    質実剛健の形意拳
    迅速果敢の蟷螂拳
    一撃必殺の八極拳
    千変万化の八卦掌
    日本武術と中国武術の交流
    急所・つぼ・三年殺し
    毒手・毒薬・かくし武器
    猛練習とシゴキ
    秘伝とは何か
    完成への道

 あとがきにかえて

謎の拳法を求めて5.jpg
「拳児」

 劇画「拳児」を読まれた方なら、目次を見ただけで色々思う所があるかと思いますが、主人公の拳児の道程は、松田隆智先生の体験談をベースにしており、指導格のキャラクターはほぼ全員実在の人物で、名前も似せていますし、顔も良く似ています。 「拳児」の原作と言っても過言じゃないかも知れませんねぇ。
 例えば空手家の高山双八は金澤弘和、八極拳の張仁忠は張世忠、劉月侠は劉雲樵、蘇崑崙は蘇焜明(後に┥瓦伐名)といった風に、見る人が見ればニヤリとするかも知れません。

謎の拳法を求めて3.jpg
劉雲樵

 後に中国拳法を誤解させたとか、八極拳最強伝説など、批判を浴びる事もありますが、佐藤金兵衛先生、笠尾恭二先生と並んで日本に中国拳法を広く紹介した立役者である事は間違い無いでしょう。 まぁ、最大の貢献者はブルース・リーを始めとした香港映画だとは思いますが。

謎の拳法を求めて9.jpg

 さておき、本書では実に時代的なんですが、中国拳法や古武術には念力/超能力を開発する事が出来る様な事も書いてますねぇ。 ちょうど出版の前年にユリ・ゲラーが来日しており、つのだじろう先生が自身の漫画で超能力を紹介していた時期ですので、達人の武勇伝や感覚的な技術を超能力に求めたとしても不思議じゃないでしょう。 今では笑って否定される方も多いでしょうが、ロマンがありましたよね。 この辺は西野流呼吸法ぐらいまでがピークかな。
 そしてこれが一番有名でしょうね、発勁の話。 まずは前段階として人間の体はその大半が水で構成されていると位置付け、衝撃の与え方によっては人体内に波紋を起こさせ、内部から破壊するという北派中国拳法の発想を紹介してます。 今風に解釈すれば浸透力の高い打撃でしょうか。

謎の拳法を求めて10.jpg

 で、勁。 松田先生はこう説明してます。

 …勁の語は、「能力」を意味する場合と、「圧縮された力」を意味する場合があり、前者の場合には「化勁(相手の力を消す」「聴勁(相手の動きを察知する)「粘勁(相手にくっついてしまう)」など多くの種類があり、後者には「発勁」といって、自分の発揮できる最大限の威力を、爆発させる方法をいう。
 この発勁の場合の"勁"は、よく"力"と混同されやすいが、両者はまったく別の性質のものであり、「力」は人間の生理作用によって生まれる筋力であり、その性質は滞おり(力む)、散じやすく浮いている。
 これに対して「勁」は力を瞬間的に統一することによって生まれ、その性質は活発で、沈んでいて、鋭い。
 この性質は鉄にたとえた場合、「力」は精煉される前の"鉄鉱"であり、「勁」は精煉された"鋼鉄"である。
 具体的に説明すると、たとえば両手でタオルを強く引きちぎる場合、両手でタオルを強く引っ張って「ビリビリ」とちぎるのは「力」であり、一瞬の間に「プツッ」とちぎるのは「勁」である。
 または"走り高飛び"の競技で、助走している間にはたらくのは「力」であり、いざ跳び上がる時に地を踏み切るためにはたらくのが「勁」である。
 この発勁を成功させるためには、動作と呼吸を一瞬間のうちに一致させることが必要で、それぞれ発勁にかなった呼吸法と動作を、正しく行なわなければならない。

 後段をざくっとカットしましたが、まぁ、平たく言うと瞬発力を伴う力、かな。 尤も、これは松田先生が学んだ発勁の話なので一般的にどうかは知りません。 やった事無いですしw 呼吸法ってのは多分逆腹式でしょうけど。
 ここを読んだ感じだけだと、そんなに摩訶不思議な超能力的な何かじゃあ無いんですけど、気を集めるとか凝縮させるとかって言葉がかなりの誤解を生んだ様に思いますね。 最終的に「ドラゴンボール」のかめはめ破まで行き着いてしまいましたがw

 んで、当ブログ的にはここに触れねばなりませんね。 大山倍達総裁との関係です。 松田先生は高校生の頃に大山総裁の家に居候して、大山総裁や浅草の剛柔会で空手修業も行っており、結構可愛がられたそうです。 この時に太氣拳の澤井健一先生や大東流の吉田幸太郎先生を紹介され、大山総裁から頂いた本で日本の武術を知ったりと、図らずも後の松田先生の世界を開いてます。 ちなみに松田先生は今でも有段者名簿に本名の松田鉦で載ってますね。
 以前紹介した「近代カラテ」では1967年の時点でこう書かれています。

略歴、
昭和12年6月6日生れ29才、
愛知県岡崎市生れ、
岡崎北高校出身
各種の職業を経験したが、武道に専心するために、現在、無職、
大山師範に目白時代に師持した。 17才当時。
各種の武術に打ちこみ、目下、中国拳法殊に内家の拳法について研究中である。

 時期はちょうど佐藤金兵衛先生に学んで居た頃でしょうかね。 更に遡ると、松田先生は1956年の「月刊空手道」(空手時報社)で学生空手修業者を集めた座談会「十代の意見」に登場していたりしますw ついでに同号に松田先生の投稿もあります。 手紙を投稿した後に上京し、座談会に出たとの事。 ちなみにこんな投稿でした。

謎の拳法を求めて4.jpg
奥が座談会時の松田隆智

☆月刊空手道に対する希望。
一、対談者
 〇嚇鎮ね裟萓、藤田西湖先生。
一、写真
 ゝ蹐汎っている大山先生。 ⊆由組手のスナップ(各師範と各大学幹部)
一、道場拝見。 日本拳法研究会
一、 その他。
 宮城長順先生松村宗秀先生の鍛練法を詳しくお知らせ下さい。
 以上ですが、今度愛知県(主として名古屋市内)の松濤館流の学校で学生連盟を作る事になりました。 理由は、今迄名古屋空手クラブとして行って来た訳ですが、クラブの師範の方が暇がないので、これから(九月一日)学生ばかりで連盟を作り、師範無しで練習することになりました。
 僕はこの事について非常に残念に思います。
ー中略ー悪いくせ気がつかない内に出来てしまう様で大変困っていますー後略ー

 ちなみに手紙にある山田先生や藤田先生にもお会いしたそうです。 どちらも大山総裁が知ってらっしゃる方ですので、居候した場所が非常に良かったんでしょうw で、多分松田先生が研究家としてのスタートは極真の機関誌「近代カラテ」(1967年)なんですよね。 最初のレポートにはこう書かれています。

謎の拳法を求めて7.jpg
1967年時の研究(PC向け拡大版)

 岡崎市に住う、大山師範目白時代の弟子、松田鉦氏より、珍しい貴重な、研究レポートが届きました。
 「中国拳法」について、実地にやって見るかたわら、多くの資料探索の旅などを行なって集めたもので、日本での研究の資料不足の中で、良くその労を惜しまず、現在も尚、研究中であります。
 この度この内のごく、取っかかりの事として、レポートされたものを送られて来ました。 これからも尚、一層の研究の中で、不備な点、不明な点があばかれて行く事でしょう。

 こうして諸流を研究する内に台湾に辿り着き、そこから大陸へと赴き、数々の拳法を紹介した氏の功績は、決して色褪せる事は無いでしょうね。


 という事で、松田隆智著「謎の拳法を求めて」、でした。
 現在の松田先生は「最高の突き」を求めて日々鍛練中だそうです。 最近も本を書かれていますが、まだ読んで無いのでその詳しい事は知りません。 ただ「月刊秘伝」の特集記事は読みましたけどね。 「リアル拳児の現在」って記事。 結構面白かったです。

謎の拳法を求めて8.jpg

 「拳児」は好きな漫画ではあるのですが、最後の闘いから最終話に不満がありますw 後、後半の戦闘で主人公が相手の技名を言うシーンが何度かあるんですが、その辺に緊迫感の欠片も無いのがちと残念ですね。
 それでは、また。

 …アレ? 何か今回は本編よりも寄り道が多かった気が…w


参考文献:
月刊空手道 1956年10月号 空手時報社 1956年
近代カラテ 1967年6月号 近代カラテ研究所 1967年
近代カラテ 1967年7月号 近代カラテ研究所 1967年
週刊少年サンデー 1974年40号 小学館 1974年
月刊秘伝 2005年12月号 BABジャパン 2005年
謎の拳法を求めて 松田隆智著 東京新聞出版局 1975年
八極拳 劉雲樵著 大柳勝訳 新星出版社 1985年
拳児 第3巻 原作:松田隆智 画:藤原芳秀 小学館 1988年
拳児 第12巻 原作:松田隆智 画:藤原芳秀 小学館 1990年









東京・池袋の武道具専門店 ブドウショップ



フレッツ光で最大106,000円キャッシュバック実施中!





コメント
中国拳法と言えば王樹金先生関係の映像にR山師範らしき人が写っていますね。
著書には太気のことは書いてありますが、王先生の事は書いてないと思いました。
  • kimura
  • 2012/06/27 10:29 PM
陳家太極拳とか蟷螂拳の本を友達から借りて、夢中になって読んだことを思い出します。夜に近くの空き地で練習したりして…、あの頃は幻想が一杯だったなあ…。
  • バックドロップ
  • 2012/06/28 1:04 PM
中国武術は平均して意拳の系統が強いですね。
  • やいや
  • 2012/06/28 8:19 PM
>kimuraさん
王樹金先生については、「生涯の空手道」に載ってますよ。 第6回全日本の直前ですね。
王先生が帰国するまでの約半年ほど通って、太極拳や形意拳の五行拳を学んだそうです。
この時に学んだ太氣拳と若干違う立禅が廬山先生には合わなかったとか。

>バックドロップさん
確かにそう言う意味では今はロマンがありませんねぇ。
大山総裁は「闘うところに男のロマンがあるんだよ」と仰っていましたが、今思えば、闘わないところにはもっとロマンがあるのかも知れません…w

>やいやさん
元の形意拳からして名門ですよね。

  • Leo
  • 2012/06/29 10:14 PM
>Leoさま
思い出しました!!失礼しました。
そういえばこの本には大東流の佐川先生の話も出ていたと思いますが、松井館長が入門した、と聞いたことがあります。勉強熱心ですね。
  • kimura
  • 2012/07/02 10:29 AM
>kimuraさん
大東流合気柔術の木村達雄先生の所ですね。
他流の良い所を取り入れるのは良い事だと思います。
大山総裁も色んな武道を学びに行ってますし。
  • Leo
  • 2012/07/03 8:45 PM
キックの猪狩元秀も佐川道場ですね。
  • やいや
  • 2012/07/04 1:08 AM
>Leoさま やいやさま
あと有名なところでは宇城さんのところへ通っている人も多いですね。
  • kimura
  • 2012/07/04 10:25 AM
>やいやさん、kimuraさん
昔の武芸十八般とは、それぞれ学ぶ事で総合的に身体を鍛えるという目的もあった様ですので、色々見て多角的に学ぶのは身になる様に思います。
  • Leo
  • 2012/07/07 1:36 PM
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック
http://efight.jp/news-20130724_20234 …日本における中国武術研究の第一人者・松田隆智氏が、7月24日(水)7時39分、急性心筋梗塞のため死去した。享年75歳。 (略)・・・極真空手の創始者・大山倍達に師事したほか多くの武道遍歴を重ねた後、台湾・中国大陸に渡っ
  • 見えない道場本舗
  • 2013/07/25 7:58 AM