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大山倍達マニアック検定

望月昇著「最強格闘技 ザ・ムエタイ」(1989年)

JUGEMテーマ:格闘技全般
 

 さて、ムエタイですムエタイ。
 多分80年代後半くらいまでは極真的には最大のライバルでした。 特に雑誌、「ゴング格闘技」(日本スポーツ出版社版)が極真とムエタイを大きく取り扱っていましたし、極真に限らず、グレイシー柔術以前の日本格闘技界においては黒船だったと言えます。
 今回紹介する望月昇著「最強格闘技 ザ・ムエタイ」は、当時殆ど存在しなかったムエタイの入門本であり、現在でもスタンダードな本としての地位を確立していると思います。

ザ・ムエタイ1.jpg

 何か97年に同じ筆者が同じページ数で同じ出版社から「神秘の格闘技 ムエタイ―最強必殺技をものにする」という本を出している様ですが、こちらは未見です。 多分表紙が変わっただけじゃないかなぁと思いますが…。



 ムエタイがいつから日本に知られる様になったのか、その辺りはよく分かりませんが、TBSで放映していた「兼高かおる世界の旅」で有名なジャーナリストの兼高かおる氏の「世界たべある記」にはこんな記述がありました。

 毎週末には開かれるタイ・ボクシングに私は行ってみることにした。 戦前タイ・ボクシングを映画でみて、その物凄さをよく覚えていたからであった。 私の記憶では殴る、蹴る、とっくみあうの、凡そ日本でみるボクシングのルールを無視した乱暴狼藉のきわまるものであったのである。


 兼高氏は1928年生まれなので、1930年代半ばから41年末辺りまでにニュース映画だか記録映画を見たんでしょうか。 これが発掘されれば、世界最古のムエタイ映像になるかも知れませんw まだ荒縄巻いて闘ってる映像だったのかなぁとか、見てみたいですねぇ。
 で、その後、日本ボクシング界がボクシング隆盛の時代に同じアジアで国交のあるタイから選手を掻き集める過程で実態はよく知られていないものの「タイ拳」(タイ式拳法)の名称で広まります。 ここで活躍プロモーターが日本キックボクシングの父、野口修氏ですね。

19591019_日刊スポーツ.jpg
ムエタイ初上陸

 1959年にはムエタイの選手を招聘し、国際式ボクシングの会場でエキシビションマッチを開催、64年の極真VSムエタイをタイでプロモート、そして66年に大阪でキックボクシングの大会を開催と着実に歩んでます。 空手側でも戦後の技術書にはタイの拳法については一言二言書かれるケースが多々あり、日本拳法空手道の山田辰雄先生は「空手ボクシング」のルールを確立させるに辺り、ムエタイの選手を招聘し、研究してます。
 大雑把に日本におけるムエタイ史を書くとこんな感じでいいのかな?
 第二次世界大戦中に帝国陸軍の駐留兵も見てたんでしょうが、大陸に駐留した武道家から中国拳法の話を聞く事はあっても、ムエタイの話は殆ど聞いた事がありません。 当時は劇場でやってたらしいですけどねぇ。
 さておき、本書の紹介に入りましょうか。 長いプロローグでしたw
 まずは目次から。

基礎知識編

白兵戦の技術から生まれたムエタイ
過酷な試合ルール
ムエタイのトレーニング
ムエタイの基本用語
    亀蚕
    教渊
闘いの舞(ワイクル)

実技編

タン・ガード・ムエイ(構え)
全てはタン・ガード・ムエイから

ティー・ソーク(ヒジ打ち)
敵の顔面を全ての角度から攻撃するティー・ソーク
腰の回転で振抜くティー・ソーク・トロン
胸とアゴを同時に攻めるティー・ソーク・ラーン
投げ技に対抗する変形ティー・ソーク・ラーン
強烈、全体重を乗せて叩きつけるティー・ソーク・ボン
ムエタイのウルトラC ソーク・クラブ
ティー・ソークをいかに防ぐか

ザ・ムエタイ2.jpg

ティー・カウ(ヒザ蹴り)
敵の内蔵を破壊するティー・カウ
ティー・カウの基本 ティー・カウ・トロン
ティー・カウ・トロンと蹴り足側の手の用法
蟻地獄の恐怖 ゴッ・コー・ティーカウ
1発KOの殺し技 ティー・カウ・コーン
ゴッ・コー・ティーカウの防ぎ方
ムエタイの大技 カウ・ロイ

テッ(まわし蹴り)
ブロックした腕をもへし折るテッの威力の秘密
テッの種類
伝統空手におけるまわし蹴りとの違い
テッの基本 テッ・スィークルーン
意外、敵の正面を蹴るテッ
敵のパンチ攻撃を殺すテッ・スィークルーン
秘技、一瞬にして2度蹴るテッ・クルン・ケーン・クルン・カウ
死にもつながる首へのテッ・カン・コー
足の筋肉・靱帯組織を切断するテッ・ラーン
敵を転倒させるテッ・ラーン
テッに対する完ぺきな防御 ヨック・バン
テッ・カン・コーはスウェー・バックでかわせ

ティープ(ストッピング)
パンチ攻撃から身を守るティープ

トイ(パンチ)
蹴りに対するカウンター攻撃としてのトイ

コンビネーション(連続攻撃)

コンビネーション攻撃の重要性
コンビネーションパターン1
コンビネーションパターン2
コンビネーションパターン3
コンビネーションパターン4
コンビネーションパターン5
コンビネーションパターン6
コンビネーションパターン7
コンビネーションパターン8
コンビネーションパターン9
コンビネーションパターン10
コンビネーションパターン11
コンビネーションパターン12
コンビネーションパターン13
コンビネーションパターン14
コンビネーションパターン15

 本書によればムエタイの歴史は13世紀まで遡るとも言われており、16世紀のアユタヤ王朝では当地で有名なナレスワン王が、ビルマ1の戦士と素手で一騎討ちを行い勝利した際に使ったのがムエタイだったとされています。
 タイ映画「マッハ!!!!!!!!」で話題になった古式ムエタイというのがありますが、まぁ、そっちの話はいずれ。

 ともあれ、本書はムエタイの基本技術紹介がテーマとなっているので、そんなに掘り下げた本ではありません。 しかしこの手の基本書すら殆ど無かった事を考えると、どれだけマニアックな市場だったんだろうと愕然としてしまいますw
 後、本書の特徴ですが、肘や膝を使った技術の紹介に相当数のページを割いている点でしょうか。

ザ・ムエタイ3.jpg

 それと…タイ語での技の名称を紹介してくれてる事。
 そうそう、ヤンキー用語で「ゲソパン」とか「モモカン」とか呼ばれてた(「カツ入れる」って言い方もあった気がしますが、知人に当たっても誰も知らなかったので超ローカルなのかも)太腿への膝蹴りも載ってますね。
 私もその後タイ人と知り合った際にちょっと役に立ってますw 発音を直されたりもしますが、タイの学校の教師が日本に交換留学で来た際にもワイクーを教えて貰う切っ掛けになりましたし、タイの英雄サマート・パヤカルンの試合に同行して汗を拭かせて貰った事を一生の自慢としていたタイ人学生とも盛り上がれましたw

ザ・ムエタイ4.jpg

 ちなみに私、右の廻し蹴りを出す時は斜めにステップインして蹴ってましたが、こういうのは本来ムエタイの技術ですよね。 こっちの方が蹴り易いと考えて蹴ってたのか…ちょっと記憶に無いんですが、ひょっとしたらこの本の影響かもです。
 そう言えばハイキックはムエタイでテッ・カン・コーと呼びますが、カン・コーは頸部を指すそうで、大山倍達総裁の技術書を読まれた方はピンと来るかな?

ザ・ムエタイ5.jpg

 そう、極真で言う廻し首蹴りですね。 …まぁ、今はこういう名称も存在しないでしょうけどw これは背足で蹴る結果、獲得された技術じゃないかなぁと思います。 中足ならこめかみを蹴りに行きますからね。
 あぁ、そうだ、本書で廻し蹴り→後ろ廻し蹴りのコンビネーションを「チャラケー・ファード・ハーン」と言うのを知ったんだった。 ワニが尻尾を振って首を一撃するという意味らしいのですが、確かその前だったかなあ、76年に猪狩元秀先生がサタンファーソープラティープを逆転KOした話を、「ゴング格闘技」で「ワニ蹴り」を蹴った瞬間にマッハパンチが炸裂!みたいな事が書いてあって、どんな蹴りやねんと思ってたんですw

 こんな感じでムエタイを代表する技術については懇切丁寧にページを割いて書いてあり、 こういうムエタイの基礎的な技術について知りたい方にとっては必須本だったと思います。
 過去形なのは…ここ10年くらいで有名なキックボクサーやムエタイ戦士による良質な技術書が出始めたからですw
 それでも、ムエタイ本の先駆者としての栄光は揺るぎないと思いますね。
 

 と言う事で、望月昇著「最強格闘技 ザ・ムエタイ」でした。
 キックボクシング本は1969年出版本を2種類紹介しましたが、ムエタイに関しては初紹介ですかね。
 ネタは色々あるので今後も他の本を紹介するでしょうが、先にこの本を紹介したかったのです。
 出版されたのが89年ですので、UWFから始まる格闘技ブーム真っ盛りですかね。 キックボクシング界だと、オランダキック界を筆頭に、ヨーロッパやオーストラリア辺りからの外国人選手が熱かった時代かな。 まだヘビー級こそ数は少なかったですが、重量級の選手が日本にも来日する様になり、後のK-1にもかなりの影響を与えた事でしょう。
 まぁ、でも当時のキックファンはやはりマニアックな客層だったんだろうなぁ。 この頃にもっと努力してればブラジリアン柔術並の競技人口を得られたかも知れませんねぇ。 というか沢村忠ブームを生かせなかったのがな…。 この辺りは護身を掲げて、まずアマチュアありきの空手やブラジリアン柔術とは違いますね。 あ、便宜上ムエタイとキックボクシングを纏める形で記事を書いてますが、別物ですのでお間違い無い様w
 ファイトマネーやプロモートで稼ぐという発想では無く、指導料で稼ぐという発想(元々は伝播が目的ですが)がキックには足りなかった。 今みたいに新空手もありませんし、プロありきの競技の競技人口が少ないのは致し方無いかも知れません。 せっかくアマのムエタイもあるので、もっと盛り上がって欲しいんですけどね。
 ちなみに大山倍達総裁VSブラック・コブラですが、これは不明ですw 現在のところ、「可能性はある」としか言えませんね。 いや、興味深い調査の情報が上がっては来てますが、当ブログで紹介するのは、表に出てからかなぁ。
 と、気になりそうな話を書いたところで、今回はここまで。
 それでは、また。


参考文献:
日刊スポーツ 10/19 1959年
週刊現代 1962年 3/25号 講談社 1962年
週刊現代 1964年 4/23号 講談社 1964年
世界たべある記 兼高かおる著 光書房 1959年
最強格闘技 ザ・ムエタイ 望月昇 愛脇 1989年









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コメント
確かこの著者だったと思いますが、1950年代にフランスでサバットの王者に挑戦した人だった思いますよ!違ったかな?



ブラックコブラですが、1950年代にコブラというニックネームを付けられた選手は確かに2人は存在しました!
ブラックコブラについては実在すれば誰であったかはほぼ出来てます。が、事実かどうかわからんですからね(笑)

まぁ、いろんな予想あるんで反論しないですが、自分はブラックコブラとの試合は、ある選手をモデルにして書かれたストーリーだと思いますね。


確かにたくさんの新聞があったでしょうが、『公式な試合』という事になると99.9%やってません。
バンコクでの公式試合なら99.999999%やってません。
ルンピニーなら1000%やってません。



  • 研究家
  • 2013/04/14 10:03 PM
>研究家さん

あ、ネタ振りしたら特急でいらっしゃったw

1950年代のサバットと言うと…まだ戦争や国際式ボクシングの影響でくすぶってた時期かな。 靴履いて蹴り合ったのだろうか…?

ブラック・コブラですが、ルンピニーはまだ無かったとして、個人的には野口さんが言ってたらしい「ジムでスパーした」説かなーと考えてます。
なので、多少は中身を聞いてますが、新説をワクワクしながら待ってますw
  • Leo
  • 2013/04/14 11:24 PM
懐かしい本をありがとうございます。
わたしは持っていませんが、本屋さんで見て気になっていた記憶があります。
黄色い表紙の愛隆堂ですよね。つまり当時は(一部怪しげな)中国拳法と同じようなポジションだったのではないかと思います。
  • 2013/04/15 11:09 AM
昔の空手スタイルでは、どう逆立ちしてもムエタイには敵わないでしょうね。
  • やいや
  • 2013/04/16 9:00 AM
>ゆさん

ムエタイと同じ様なポジションだったかなぁ? という気もしないでもありませんが、そう言えば「ゴング格闘技」では中国拳法なんて近藤隆夫さんの突撃レポート位でしか見る事はありませんでしたが、初期の「格闘技通信」ではムエタイと同じ扱いだったかも知れませんねw
連載もありましたし。

>やいやさん
まぁ、リングの上では圧倒的に不利でしょうねぇ。 「格闘Kマガジン」でしたっけ、確かムエタイと中国拳法の異種格闘技戦100年史みたいな記事を書いていましたが、拳法家が勝ったケースは一度もありませんでした。
ただ、これは記録は未発掘だと思いますが、確か藤本貞治先生がタイのチェンマイだったかな、あの辺りで何試合かやって全勝したらしいですけどねぇ。
  • Leo
  • 2013/04/21 8:25 PM
確か、パワー空手に大山館長もルンピニー、ラジャでなく象に乗り、奥地に行き、そこで戦った
と書いてありましたと思います。
真偽はわkりませんが
  • 外野
  • 2013/04/22 12:48 AM
昔、日本キックボクシングのリングに色々な武術家が登場しましたが、テコンドーのような武術やフルコン空手みたいなのとか~彼らは何もいいところなく全敗でしたね。当時のムエタイ相手だったら、もっと酷い結果になってたかも。。
  • やいや
  • 2013/04/23 12:42 PM
偶然すごい本を見つけました。
その名もずばり「幻の大山道場の組手」!!
大山総裁の組手技術の解説や、伝説の人・安田先生の対談など、極真ファン、というより大山道場ファンは必携の本だと思います。
Leoさまのレビューを楽しみにしています!!
  • kimura
  • 2013/04/23 1:04 PM
>外野さん

そんな記述ありましたっけ?
まるで「空手バカ一代」で添野先生と闘ったダーヤンみたいですw

>やいやさん

まぁ,全敗かどうかは細かく調べた事が無いので分かりませんが、基本的に日本の古い格闘スタイルだとコンビネーションへの対応が難しいんですよね。
なので勝つのは困難ではあるでしょう。

>kimuraさん

はい、今日手元に届いて読んでますw
私が一番大山総裁らしさを感じる転掌の掛け技が多く出ていて嬉しい限り。
まだ安田先生との対談までは辿り着いていませんが、楽しみに読んでます。
レビューもしますよ。
  • Leo
  • 2013/04/23 11:10 PM
Leo様
ご存知かと思いますが、渡辺先生のブログにブルミン氏に関する質疑がコメント欄にされています。
やはり実際にいた方の証言は貴重ですね。
http://ameblo.jp/watanabekyokushin/
  • kimura
  • 2013/04/25 8:20 PM
>kimuraさん

週末覗こうかと思ってましたので、今知りましたw
お客さん的な扱いだったというのは興味深いですね。
以前書きましたが、ブルミン先生はビル・バッカス先生と共にドン・ドレガー氏の紹介で大山道場に来られたそうなので、渡邊先生の仰るスポンサーか誰か、というのは、ドレガー氏の事でしょう。
ドレガー氏の著作もその内紹介したいと思います。

  • Leo
  • 2013/04/26 12:46 AM
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