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大山倍達マニアック検定

【レビュー】大山倍達著"This is KARATE"/「秘伝 極真空手」(1965年/1976年)

JUGEMテーマ:空手
 
 今回はそろそろこの本行っておこうかと思いまして、大山倍達総裁の名著"This is KARATE"とその日本語版となる「秘伝極真空手」について色々書いてみようかと思います。

thisiskarate.jpg

 本書が出版されたのは1965年。 ご存じの通り前著"What is Karate?"から続いて2冊目、そして少なくとも極真においては技術書の決定版となるでしょう。
 そして日本語版が出版されたのが1976年。 何と英語版の11年後です。 恐らくは極真ブーム真っ只中の75年頃に方々から要請があったんじゃないかと思います。 「大山館長の伝説の本が読みたい!」そんな投書があったんじゃないかなぁ。




 ちなみに初版が出版されたのは日本出版貿易で、ここは本来国内外の書籍を輸出入する会社でした。 66年にここの出版部が独立し子会社となります。 これが日貿出版社ですね。
 設立当初は日本出版貿易の望月政治社長が兼任していましたが、翌年同社専務で、ニューヨーク支社長だった小澤武雄氏が社長へと就任…と、極真関係で名前が出るのはこの辺りまでかなぁ。 小澤社長は大山総裁からボディガードとしてジャック・サンダレスクを紹介して貰い、共にニューヨークを闊歩したとかw
 まぁ、そういう事で会社が違う為、英語版で見ると社名が違うんですよね。 ロゴも微妙に違いますw 本書の初版はJapan Publications Trading Company、そして改訂版はJapan Publications, Inc.,。
 知っていても大した意味の無い話ではありますが、こういう小ネタを掘り下げるのが当ブログの特徴でもありますw

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改訂版

 英語版も相当売り上げたそうですが、日本語版もかなり売れたと思います。 で、多分一番大山総裁のサインが多い本じゃないかな。 何せ本部に予約すると、大山総裁のサインとプロマイドが付いて来ましたからw 市場でもサイン入りが多いのはそういう理由からです。 余談ですが「続・秘伝 極真空手」も同じ理由でサインが多いですね。 ただし、こちらはプロマイドでは無く、大山総裁の写真の下にカレンダーが入っていましたが。

 んではバージョン違いネタに行きましょうか。 "This is KARATE"初版は65年3月で函入。 以降赤い表紙の版が72年の第9版までかな、そして73年に多分表紙が金の改訂版。 …で、80年の版から一部写真が東谷巧先生に差し替えたバージョンになるかと…思いますw
 いやぁ、まだ未確認なのがありまして、具体的には73年版から78年版の間ですね、この辺りが確認出来ていません。
 予想では東谷先生の写真に差し替えていないけどカラーグラビア入りじゃないかと思ってます。
 ちなみに、この金表紙版、91年の第5回世界大会を記念して限定500部復刻されたんですが、復刻バージョンは中に世界大会の日付入りの大山総裁のサインがあるのですぐに分かります。

thisiskarate6.jpg
限定復刻版のサイン

 当時の最高師範や会長にも違いが見られますね。 日本空手道極真会の会長は佐藤栄作、師範代は石橋雅美、四段(役職無し)に安田英治と黒崎健時。 73年版以降は会長が毛利松平、師範代に中村忠、大山茂、ボビー・ロー、指導員に大山泰彦、三浦美幸、金村清次、岸信行、山崎照朝、添野義二、大石代悟、佐藤勝昭、となっています。
 訳としては最高師範と師範とか、そういう風になるんでしょうが、どうもHead Instructorを師範代と訳している様なので、そちらに準拠しました。

 ついで「秘伝 極真空手」。 初版は1976年で、こちらも函入。 一部写真が東谷先生へと差し替わっています。 そして本部に予約した方は前述した様に初版のサイン入りとなります。

秘伝極真空手1.jpg

 これは何版出たのかなぁ、手元にあるのだと第14版が1982年に出ています。 定価が8000円だったので、その後出版されたお手頃価格な技術書の方が売れたんじゃないかと思いますが、それでもハードカバー大型本で14版はかなりのものでしょう。 あ、初版とそれ以外だと奥付と著者紹介の順序が入れ替わってますw
 しかし日本語版の函の作りはちょっと面白いんですよね。 前から見ると拳で壁をぶち壊しており、後ろから見るとその貫通した拳が見えるという風になってますw そして函の中、ハードカバー表紙には極眞會の浮き彫り。 金額に違わない豪華さです。

 ちなみに"This is KARATE"は東南アジア版というのもあります。 これは画像しか見た事無いですねぇw 海外で出品されているのも一度しか見てません。

thisiskarate3.jpg
東南アジア版

 そして最新版の"This is KARATE"は以前紹介しましたね、ロシアから多分98年に出版されています。 別表紙版もあり、どうも今世紀になっても版を重ねている模様。

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ロシア版

 ロシアは極真が盛んな国ですが、日本では文庫本以外絶えて久しい大山倍達本が未だ現役で読まれているという事実に、感動を憶えるのは私だけでしょうか。

 それでは…厖大な量になりそうですが、まずは英語版の目次から。 …量が多いので、各章のみにします。 それでもかなり長いので、詳細な解説は後段にありますし、興味の無い方は一気にスクロールしましょうw

contents

Preface
Foreword
Photographic Prelude

        PART I BASICS
■1. INTRODUCTION
■2. TECHNIQUES AND DRILL SYSTEM

    1. TECHNIQUES
    2. BASIC TECHNIQUES CLASSIFICATION
    3. DRILL SYSTEM
■3. HANDS AND FEET--KARATE WEAPONS
    1. HANDS
    2. FEET AND LEGS
■4. PREPARATORY CALISTHENICS
■5. STANCES

    1. KARATE STANCES
    2. BALANCE
    3. WALKING AND TURNING

        PART II TECHNIQUES
■6. BASIC TECHNIQUES TRAINING
    1. THRUSTING AND STRIKING METHODS
    2. KICKING METHODS
    3. BLOCKING METHODS
■7. LUNGE TECHNIQUES
    1. THE LUNGE THRUSTS (STRIKES)
    2. THE LUNGE KICKS
    3. THE LUNGE BLOCKS
■8. FORMAL EXERCISES
    1. ABOUT THE FORMAL EXERCISES
    2. Taikyoku I, II AND III
    3. Tensho
■9. FORMAL PRACTICE FIGHTING
    1. ABOUT THE FORMAL PRACTICE FIGHTING
    2. THREE-STEP PRACTICE FIGHTING
    3. ONE-STEP PRACTICE FIGHTING
    4. FREE-STYLE PRACTICE

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岡田博文版

        PART III SPECIAL TECHNIQUES
■10. THE ROUNDHOUSE BLOCK
    1. THE ROUNDHOUSE BLOCK
    2. THE KNIFE-HAND ROUNDHOUSE BLOCK
■11. THE ROUNDHOUSE INVERTED THRUST
    1. THE TECHNIQUES
    2. EXPLANATION OF THE ROUNDHOUSE INVERTED THRUST
    3. TRAINING TO COVER AND SEIZE YOUR OPPONENT'S HAND

        PART IV SPECIAL DRILLS
■12. SPECIAL DRILLS
    1. THRUSTS
    2. KICKS
    3. BLOCK
■13. THE STONE-BREAKING TECHNIQUES
    1. ABOUT THE STONE-BREAKING TEHNIQUES
    2. DYNAMICS
    3. BREAKING ROOFING TILES
    4. BREAKING BOARDS
    5. BREAKING BRICKS
    6. STONE BREAKING
    7. ICE BREAKING
    8. THE BOTTLE CUT

        PART V APPLICATIONS
■14. HAND-HOLD REVERSALS
    1. AGAINST HAND HOLDS
    2. AGAINST LAPEL HOLDS
    3. AGAINST AN ARMPIT OR SASH HOLD
    4. COVERING AND BLOCKING
■15. LYING-DOWN TECHNIQUES
    1. FACE-UP POSITION AGAINST
    2. SEATED POSITION AGAINST
    3. IN COMBAT AGAINST
■16. EVERYDAY SELF-DEFENSE
    1.WALKING STICK
    2. ONE AGAINST TWO
    3. AGAINST A KNIFE
■17. SELF-DEFENSE FOR WOMEN: HANDBAG TECHNIQUES
    1. AGAINST AN ATTACK
    2. AGAINST A KNIFE
    3. SELF-DEFENSE TRAINING

秘伝極真空手2.jpg
東谷巧版

        PART VI SIGNIFICANCE AND BACKGROUND
■18. SIGNIFICANCE
    1. KARATE AS CALISHENICS
    2. KARATE FOR SPIRITS
    3. SPIRITUAL UNITY AND BREATHING METHODS
    4. THE REAL MEANING OF KARATE
■19. THE ORIGINS
    1. KARATE'S ANTECEDENTS
    2. BODHIDHARMA AND Shao-lin-ssu BOXING
    3. KARATE ORIGINS AND GROWTH
■20. DEVELOPMENT
    1.CHINA
    2. KOREA
    3. THE RYUKYU ISLANDS
    4. DEVELOPMENT IN JAPAN
■21. SCHOOLS AND FORMAL EXERCISES
    1. SCHOOLS
    2. FORMAL EXERCISES
■22. KARATE AND THE MARTIAL ARTS
    1. THE BIRTH OF THE MARTIAL ARTS
    2. THE MARTIAL ARTS OF THE SIXTH SENSE
    3. THE MARTIAL ARTS OF GREAT VALOR
    4. KARATE'S INNERMOST MEANING
■23. RELATION TO ZEN
    1. KARATE IS ZEN
    2. SPIRITUAL UNIFICATION AND THE STATE OF IMPASSIVITY
    3. MASTERY OF THE INSTANT
    4. ZEN'S BASIC CONCEPTS
    5. METHODS OF MASTERING ZEN
■24. RHYTHM
    1. POINTS IN COMMON WITH MUSIC AND THE DANCE
    2. RHYTHM IN THE KARATE FOOT POSITIONS
    3. MUSIC'S IMPORTANCE TO KARATE
■25. KARATE FUTURE'S PROGRESS
    1. A CORRECT VIEW OF KARATE
    2. KARATE STRUCTURE: CIRCLE AND POINT
    3. UNIFICATION OF THE SCHOOLS AND THE TREND TO MAKE KARATE A SPORT

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英語版の函


        PART VII APPENDIX
■26. THE PRACTICE SUIT AND BOWING PROCEDURES
    1. THE PROPER HOLDING OF THE PRACTICE SUIT
    2. TYING THE SASH
    3. VARIOUS BOWING PROCEDURES
■27. USING TRAINING EQUIPMENT
■28. BODY STRUCTURE AND VITAL POINTS
■29. THE KARATE TRAINING HALL

    1. TRAINING AND THE USE OF THIS BOOK
    2. SOME FORMALITIES

Author's Note
Glossary
Index


 続いて、「秘伝極真空手」

目次

はじめに
口絵

    第一部    基礎篇
■第1章    空手とは
    1.技の体系
    2.基本技の分類
■第2章    技と練習の体系
    1.手
    2.足の武器
■第3章    手と足の武器
■第4章    準備体操
■第5章    立ち方

    1.空手の立ち方
    2.バランス
    3.歩き方と回転

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91年限定版の広告

    第二部    技術篇
■第6章    基本技の練習
    1.突き、打ち
    2.蹴り技
    3.受け技
■第7章    追い突き
    1.追い突き、追い打ち
    2.追い蹴り
    3.追い受け
■第8章    型
    1.型の練習について
    2.太極I、II、III
    3.転掌
■第9章    約束組手
    1.組手について
    2.三本組手
    3.一本組手
    4.自由組手

秘伝極真空手8.jpg
基本技の分類

    第三部    秘伝篇
■第10章 まわし受け
    1.まわし受け
    2.手刀まわし受け
■第11章 円型逆突き
    1.円型逆突きの手順
    2.円型逆突きの使い方
    3.転掌掛けと手をつかむ練習

    第四部    特別練習
■第12章 特別訓練
    1.突き
    2.蹴り
    3.受け
■第13章 石割りの技法
    1.試割りについて
    2.試割りの力学
    3.瓦割り
    4.板割り
    5.レンガ割り
    6.石割り
    7.氷割り
    8.壜切り

    第五部 応用篇
■第14章 逆技
    1.手をつかまれたとき
    2.襟をつかまれたとき
    3.脇下、あるいは帯をつかまれたとき
    4.掛けと受け
■第15章 寝技
    1.あおむけ姿勢から
    2.自分が坐った姿勢のとき
    3.固め技に対して
■第16章 日常の護身術
    1.ステッキ護身術
    2.二人に身体をつかまれたとき
    3.ナイフに対して
■第17章 女性のための護身術
    1.素手の相手に襲われたとき
    2.ナイフで襲われたとき
    3.ナイフ対素手の心得

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円型逆突き

    第六部    空手の意義、試合規則
■第18章 空手とモラル――極真精神――
    1.武の真髄は礼節にあり
    2.礼節とは
    3.孝心義拳
    4.生死を超える勇気
    5.日々の鍛練
    6.極意の道
■第19章 空手と禅
    1.心頭を滅却すれば
    2.精神統一の修行法
    3.丹田訓練と呼吸法
    4.完全呼吸法
■第20章 世界に伸びる空手――試合規約――
    1.試合規約
    2.審判動作基準
    国際空手連盟機構図

        第七部    補遺
■第21章 道衣と礼
    1.道衣の正しいたたみ方
    2.帯のしめ方
    3.礼の仕方
■第22章 機具を使っての訓練
■第23章 身体の構造と急所
■第24章 空手道場

    1.練習の順序と方法
    2.昇段について
    3.極真奨学会 極真会館道則
    4.道場訓

あとがき
参考文献
索引


 英語版と日本語版の最大の違いは、日本語版第18章以降ですかね。 英語版だと空手の意義や精神などに続いて、空手の伝来や他格闘技について、そしてまだ大会が無かった時代ですからね、将来の大会についても試行錯誤していた様が伺えます。 グローブを着け、防具を着けて体重制やラウンド制を導入してムエタイの様なルールはどうだろうか、そして一般に公開すべきだと英語版にはありますねぇ。
 後はまぁ、英語版ではリズムや音楽についての記述がそこそこあるのですが、日本語版では呼吸法の記述に差し替わってます。
 あぁ、大事なのを忘れてたw 英語版は当時極真会館の会長だった佐藤栄作先生から推薦を戴いています。 日本語版は、帯にだけ推薦が書いてますけど、こちらは今東光先生、毛利松兵先生、千葉真一氏、梶原一騎先生と4人もいます。 今先生の推薦の言葉を引用してみます。

秘伝極真空手9.jpg
貫手

★人柄と技にホレた
   今東光(作家・名誉3段)


大山君が牛と闘った時以来のファンだよ、ぼくは。 ビールびん切りを演出だというアメリカ人の目の前で、警棒を手刀でたたき折って"力"を示す一方、力道山が柔道の木村と闘って木村の息の根を止めたとき、武士道を知らぬ奴と怒って力道に挑戦した大山君の空手は古今無双だ。 君の人柄と技が世界の王者となったのは当然、この本はまさに君の技と心意気の結晶といえる。


 …アレ? 警棒を叩き折ったのは力道山のエピソードでは? 大山総裁の話としてこのエピソードを一度も聞いた事が無いので、これは今先生の記憶違いじゃないかと…。

 と、とりあえず本文の説明をしましょうw
 英語、日本語の両版とも各攻撃技の分類図があります。 これ、初めて見た時は感心しましたね。 こういう表し方があるんだ、と。 無論説明文にある通り、基本技の分類ですからこの分類に縛られる必要は無いんですけど。
 で、読んでいくと、時代を先取る?技も載ってますね。 鉄槌の箇所には「倒れた相手を打つ」という用法が載ってます。 現在総合格闘技のグラウンドパンチで使用される鉄槌と同じ用法でしょう。 変わったところでは頭突きかな、3タイプの頭突きが分類されています。
 蹴りのパートにも背足蹴りのところに英語版では"revloving rea kick"、日本語版だと「後ろまわし背足蹴り」というのがあります。 というか読み直すまで気付かなかったんですけど、これ、後ろ廻し蹴りですね。 説明文にも「ふりむきながら蹴る」とあります。 いや技術紹介のところには後ろ蹴りしか無かったんで気付かなかったんですがw という事は、後ろ廻し蹴りは技術としては65年頃には存在したって事です。 ただ使われなかったので廃れた、という事になるのかなぁ。 まぁ、元々この技は九州の方の空手に1950年代には存在していたと言われていますので、あっても不思議じゃないんですが…。

 後、個人的に好きな手技のコーナー。 他の極真の技術書ではあまり見られない二本拳が載ってます。 後、中指一本拳と龍頭拳。 後に一緒になりますね、これ。 そんなに違いが無いんでw 四本貫手も2種類載ってますね。 曲げた形の貫手は横からの使い方がメインになるでしょう。 そう言えば小手はあるのに腕刀は載って無いな…。
 攻撃技は基本的には身体を流さないなど、バランス重視の解説をしています。 まぁ、崩れない体幹部を持てって事かな。 しかし突きの解説を見るとそれだけでは無い事に気付くかと。 丹田から出る力を使う事に力点が置かれています。
 基本技は岡田博文先生と中村忠先生が大活躍していますが、特殊技になると黒崎健時先生の独壇場w
 蹴りは旧版だと岡田先生が、写真差替え版だと東谷巧先生が大活躍。 やはりフォームが現在と異なりますね。 昔の廻し蹴りは今ほど腰を入れていません。 後ろ蹴りも今このフォームでやってる道場は無いんじゃないかなぁ。 これは用法が違うからでしょうけどね。 昔は正しく後ろの相手に対して蹴るのが大前提だった訳ですが、今は回転して前の相手を後ろ蹴りで攻撃するのが主目的ですしね。

秘伝極真空手3.jpg
木刀に対する受け

 受けは…まぁ掌底受けとか平たく言うとパリィですね。 顔面無しだとあまり使わない技術ですが、転掌では結構使われてます。 面白いのが木刀に対する受けです。 正しい受けが出来ていれば問題無い、という事で載せているんでしょうけど、失敗例の時に黒崎先生が微妙に演技してるのがまたw
 移動稽古は…渡邊一久先生と岡田先生かな? が中心となってます。

 型は太極I〜IIIを忠先生、転掌を大山総裁が演じてますね。 一番映像が残っている型ですので、見比べてみるのも面白いでしょう。
 ついで約束組手。 一本組手は大山総裁ですが、結構好きな動きが出て来るんですよねぇ。弧拳受けからの掌底中段突きとか、受けからの関節技とか。 頭突きもありますw テイクダウン技もあるし、上段廻し蹴りや金的掴みまで。 受けてを廻しながらの大外刈りとか横からの掬投も好きですねぇ。
 んで自由組手。 掴み技や投げ技があった事が伺える写真もありますが、面白いのはこの説明。

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一本組手の金的掴み

 自由組手をやる前に平安の型を十分にやっておく必要がある。 平安は、組手の際の身体のバランス、コンビネーションを身につけるのに最適の型である。 平安を知らぬ者の組手は、酔っぱらいのなぐり合いのようになる。

 でも、本書には平安の型は載っていないという鬼畜振り!
 後は…大山総裁の趣味でしょうね、跳び技が多いですw
 
 そして…先日Twitterで聞いて軽くショックだったのですが、現在はやってない道場もあるらしいという回し受けの系統の解説。 大山総裁は極真の秘伝とまで位置付けているのに、やってないとは何たる事かと。

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回し受け

 んで、円型逆突き、これまた大山総裁曰く、極真の基本理論であり秘伝である、と明言する技です。 もしこれらをやっていないのであれば、それは極真の空手としては少々疑問ですねぇ。
 以前から私が好きと公言してる転掌掛けについても説明があります。

 円型逆突きで、転掌掛けをあやまると、その技の効果は十分なものが望めない。 読者は空手には、掛け技や、つかみ技はないと思っていられるかもしれないが、高度な空手にはこれが含まれている。
(中略)
 つまり、つかむことをさきに覚えると、投げ技や逆技が主体となり、これでは闘争術としての技のレパートリーと運動領域が三分の一か、四分の一に狭められてしまう。 また、闘争そのものに危険が生ずる。 つかむことは、相手にもつかまれ、自由を失なうので、敵が何人もいる場合危険である。 また、敵の腕力だけでねじふせられる時もある。 それで、空手は離れて闘う武器を徹底的に鍛えるのだが、受け技が高度になるに従って、掛け技、つかみ技がとくに効果的になるケースもある。 もともと、空手は柔道や合気道も親戚関係にあって、古くから掛け技や、逆技を含んではいる。 しかし、以上の理由で、初心のうちはこれに頼らぬようにするのが正しいのである。

 ちなみにこれらの技術を使いこなすには、手首が並外れて柔軟であり、天井の桟を指だけで貼り付けるくらいの握力が欲しいとの事。 実戦では掴んで引き寄せながら打つ、という事も説明されています。 ただし、掴むのでは無く、引っ掛けるのがポイント。 極真の大会でも昔は掴みは禁止で引っ掛けは許容されていた時代がありましたが、こういった理念に基づくルールだったという事ですね。

秘伝極真空手5.jpg
掛け技

 ついで試し割りの章。 この章は色々載ってるんで説明が難しいですが、蝋燭斬りのところには太氣拳の澤井健一先生がw これは大山総裁もいずれマスターしたいと書いてて、晩年には映画で披露しましたね。 後は…、矢を捌く演武とか。 思い切り弓を引いてはいませんが、実際にやるとなったら怖いですね。 ただ、映画「最強最後のカラテ」で見た同演武よりは力が入ってるんじゃないかな、軌道が違いますしw
 しかし演武者は豪華です。 矢島力先生や岡田先生、忠先生、泰彦先生、黒崎先生、渡邊先生、藤平昭雄先生という感じ。 大山茂先生はあまり来てなかった頃かなぁ。

 応用篇は掴みへの対応や逆技、そして寝技! いやまぁ、試合などを通じて洗練された技術ではありませんが、以前書いた通り極真がキックボクシングに参戦した頃、大山総裁は世界規模で総合格闘技的なものも考えていたのでこういうのも視野に入ってたんじゃ無いかな。 黒崎先生も本部道場の、昔は畳が敷いてあった1階で寝技をガンガン指導していたと聞きますし。

秘伝極真空手6.jpg
寝技への対処

 そして護身術。 ステッキ術から対ナイフ。 ナイフに対しては「多少傷を負っても生命に別状はない」という辺り、まぁ覚悟を持ってやれという事なんでしょう。
 ハンドバッグ護身術も面白いですね。バッグでブッ叩いたり、ナイフを受けて動きを制限したりw

 ここ以降は技術解説はありませんが、色々と大山総裁が書いておられます。 良い事一杯書いてますよ。 あぁ、山籠もり時代の稽古内容も載ってます。 ここを見るとサーキットトレーニングをこの時代に取り入れていたのが良く分かるかと思います。 ちなみに日本語版には載ってる大会規約、英語版にはありませんw

 最後はおまけ的に、中村忠先生実演による道着の畳み方とかw "What is Karate?"の時には安田英治先生がやっておられましたね。 実は私も本書で畳み方を憶えた口です。 いや、道着の着方とか帯の巻き方は教えて貰っても、畳み方は教えられた事無いですもん。 で、気になったのが劇画「空手バカ一代」で李青鵬が出て来る回に、NY支部の門下生が観空マーク(極真のシンボル)を見せる様に畳んで見せびらかしていたというシーンがあったんですが…、どういう畳み方をしたのかな?と試行錯誤した事がありますw 結論から言えばフィクションかなぁ…w

秘伝極真空手4.jpg
大山道場で実際に使われていた掴みの切り方

 補強トレーニングはメジャーなバーベルから始まり、鉄下駄、サーシー、チーシーと言ったクラシカルな鍛練具、むかし少し紹介したかな、木馬。 大山総裁が飛んでる写真も残ってるのに、何でジャンプ力が無い様に言われるのか、不思議で仕方が無いですw 他にもクラシカルと言えば壺廻し。 沖縄ではカーミーに該当するんでしょうけど、まぁ、瓶は中々買えないだろうし。
 海外でもよく使われている急所図がありますね、私は今でもこの急所、7割は言えると思いますけど、現在の門下生はどうなんだろ。
 昇級昇段については、英語版の方が面白いかな? 65年当時は入門時に8級で、白帯。 6級から黄帯、4級から緑帯、、2級から茶帯となり、青帯がありませんw ちなみに昇段規定に連続組手の記載はありませんが、四段になるには手裏剣が必須になってたりしますw
 んで、入門誓約書。 これは大山道場時代の末頃から使われたバージョンかな、私はパンフの切り抜きでしたけどw

秘伝極真空手7.jpg
自由組手の1シーン

 本書はまぁ、オススメするしか無いですねw だって、65年当時の極真空手の集大成ですよ。 というか、極真を受け継ぐのであれば、本書から読み取るべき事が山ほど含まれていると、私は感じています。
 それに大会全盛の今だからこそ、大山倍達に回帰しては?と思います。 読み返すとまた新鮮な驚きがあるんじゃないかな。 私が聞く限り、沖縄での大山総裁の評価は非常に高いです。 しかし反面、極真門下の方が空手家・大山倍達への評価が低い様に思います。 大山総裁が口にしていた「高度な空手」、そう言ったものに思いを馳せてみてもいいのでは?
 なので、持っていない方は是非買いましょうw


 と言う事で、大山倍達著"This is KARATE"そして「秘伝 極真空手」でした。
 いや、今回は目次が長かったw
 "This is KARATE"は、大山総裁の代表的な名著となり、「カラテ・バイブル」と日本で武術を学んで居たジャイ・グルック氏が自著の中で書いていた事から、そういう呼び名も付きました。
 そう言えば2006年にはシンガポールから極真の秘伝書を探し求めてやって来たシンガポール人が青森で遭難し、秘伝書とは「秘伝 極真空手」では? と話題になった事がありましたっけw
 何か極真とは関係の無い先生が自分の事では、と名乗り挙げてましたが。

 さて、2014年の更新はこれで終了となります。
 皆さん「芦原英幸正伝」は読まれたのかな、私は明日から読む予定ですけどw
 そして2月には待田京介先生が「正拳の絆 一番弟子だけが知る大山倍達との思い出」が出版されるそうです。 館山の大山道場とか書かれてるといいなーと期待してます。
 ついでに言えば、目白野天道場時代から大山道場を知る方にこの頃の大山総裁の話を書いて戴きたいなーとw
 それでは、こんなブログではありますが、来年も宜しくお願い致します。


参考文献:
Masutatsu Oyama, This is KARATE, Japan Publications Trading Company, 1965
Masutatsu Oyama, This is KARATE, Japan Publications, Inc., 1984
秘伝 極真空手 大山倍達著 日貿出版社 1976年
第5回オープントーナメント全世界空手道選手権大会プログラム 1991年
最強最後の大山倍達読本 日本スポーツ出版社 1997年

参考リンク:
Масутацу Ояма и Киокушинкай (2013/12/30)
日貿出版社 (2013/12/30)
--MERCURY in the AIR-- シンガポール武道家の遺言 (2013/12/30)
ヘボナイトまこやんがネタがあって気が向いたときになんとなく書いている日記 空手バカ一代 (2013/12/30)


関連記事:
極真空手のレア物
大山倍達著 ”What is karate?”








東京・池袋の武道具専門店 ブドウショップ



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コメント
秘伝・極真空手、名著ですね。何より大山先生が直接モデルになった演武写真が豊富なのがすばらしいです。学生時代は高くて手が出ず、社会人になってからすでに絶版になっていた「続・秘伝極真空手」を古本屋で発見し、即買った記憶があります。

「受け技が高度になるに従って、掛け技、つかみ技がとくに効果的になるケースもある。・・・・掛け技や、逆技を含んではいる。 ・・・初心のうちはこれに頼らぬようにするのが正しい」

の部分、イージーな柔道と空手の混血には否定的だけれども大山先生自身は実践の掛け、掴みの有効性を否定されていたのではなかったのですね。目から鱗です。

ツイッターでも話しましたが極真を名乗る会派でも円形逆突きどころか手刀受け、まわし受けを稽古しないところが少なくないようです。しかしピンアンの型は審査の前にやらされたとか・・・猫足も手刀も知らずにどうやってピンアンの型するんだろう?

(トラックバックを貼らせていただきました。よろしくお願いします)

>古流修行者さん

大山総裁は、掛けや掴みの有効性は否定した事が無いと思います。
競技と離れた部分の空手を知る上でも、本書は指針となるんじゃないかなぁと。

しかしあれなんですかね、ひょっとしたら前屈立ち以外の移動稽古が無くなってたりとか、そういう事もあるんでしょうねぇ。
試合に特化した新しい稽古法だけが稽古では無いと思うのですが。
  • Leo
  • 2013/12/31 9:52 PM
大山空手の伝承(復興?)を心から望みます!
顔なし組手はそれなりの素晴らしさがあることは重々理解していますが、曲がりなりにも「実戦」や「武道」というなら、やはり顔は避けて通れないかと。だからといって昔のような「習うより慣れろ」式ではできませんから、段階的なシステマチックな稽古法が必要だと思います。誰か着手して下さい!渡邊先生を中心にして、何とかなりませんか?
  • 木村
  • 2014/01/03 11:51 AM
>木村さん

愛知の長谷川先生が一応公開してましたけどねぇ。 手を回してやる技法。
後は大山道場でもやってた沖縄のカキエに似た転掌掛けとか。
極真館はどうなんでしょうね、真剣勝負ルール以降、なんかそういう稽古法が作られたのかな?
  • Leo
  • 2014/01/03 3:13 PM
素朴な疑問なのですが、英語版/日本語版で「準備運動」「基本技」「約束組手」「寝技」等で一部写真差し替えがありますが何か意味があるのでしょうか?
Leoさんがご指摘された「廻し(首)蹴り」のような、特段技術的な相違は無いと考えるのですが。
  • tk
  • 2014/01/04 9:47 PM
あけましておめでとうございます。

Leoさまの下記、一文に私の思いも凝縮されています。
「沖縄での大山総裁の評価は非常に高いです。
しかし反面、極真門下の方が空手家・大山倍達への
評価が低い様に思います。 」

本当にその通りだと思います。
生前の評価をせず、ゴシップ的な表現で生計を立ててる輩を
見るにつけ、悲しく感じると同時に、反吐がでる思いです。

2月頃、町田先生の本が出版されるとのこと。
いまから本当に楽しみです。

極真50年の節目。
良いことがありますように。

今年もよろしくお願いいたします。
  • tama
  • 2014/01/05 9:47 AM
>tkさん

いやぁ、そもそも差し替える必要性があったのかどうかも不明ですw
意味があったのかどうかと問われれば…何でしょうね?

>tamaさん

今年も宜しくお願い致します。
今年は極真的には九十九里浜での牛との対決から60年、極真会館設立及びムエタイとの対決から50年と色々あるので、何かそれにちなんだ物をやろうかと考えています。
  • Leo
  • 2014/01/05 1:30 PM
昨晩実家で、自宅警備員して、漫然とテレビ見てたら、タレントみたいな外人さん2名が海にドボン!

この寒いのに大変だなぁと、その海パン外人さんをよく見たら、内1人はなんとペタス氏!
もう1人のハーレーワイルドライダー系な方は、お兄様だそう。
このテレビ、有名人の里帰りの企画のようです。所は、コペンハーゲンのようです。
ペタス氏らは行き付けのスイーツ店で、ミルクづくしな本場スイーツを食べてました。

いやぁ美味しそう、という訳で、スイーツが美味い藤沢のデ○ーズで、パフェをば。

さて、場面は道場に。神前に、ジス・イズ・空手と思われる書物が奉納されていました。
さすがは、北欧。ヨーロッパの武道精強振りがふつふつと伺えます。
ペタス氏は、大山倍達と刺繍された稽古着を着て、ヨーロッパ少年の部チャンピオンとスパーしてました。

さてさて、今時の日本人は、科学技術の分野では、ヨーロッパの大学者が本気になっても出来ないことを、あっけらかんと、出来る。
が、現行の武道格闘技の分野はというと逆ではないでしょうか?
何故に?
  • オルゴール
  • 2014/02/03 3:58 AM
>オルゴールさん

TBSかなんかでやってたみたいですね。

日本はまぁ…個々で頑張ってらっしゃる方は大勢いますし、格闘技大国ではあるんですが、古流、新興格闘技それぞれに色々な傾向があるので、海外と比べてどう、とは中々言えませんw
  • Leo
  • 2014/02/05 9:03 PM
金表紙バージョンに復刻版以外があったとは!

いつも勉強になりますm(__)m
  • 大小山川
  • 2014/02/14 7:48 PM
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