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大山倍達マニアック検定

三田雄士、カルメン・ミタ共著「カポエイラ」(2005年)

JUGEMテーマ:格闘技全般
 

カポエイラ
自由を希求した奴隷たちの生きる術
その始まりに形などなく
その終わりはどんなに優れた指導者にも予想がつかないもの
*
メストレ・パスチーニャ



 はい、今回は大山倍達総裁もお気に入り? ブラジルの格闘技カポエイラ(カポエラ/カッポエーラ)の技術書、「はじける肉体の即興芸術 カポエイラ」を紹介します。

カポエイラ1.jpg

 カポエイラと言えば、「空手バカ一代」を皮切りに、いくつかの漫画などに登場していましたので、名前は知っている人も多いでしょう。 しかし、映画「地上最強のカラテ」でも少しだけ映像があった程度で、恐らく90年代までは真の姿は不明でした。 ぶっちゃけ、逆立ちして回転して蹴る、みたいな、よく分かる様な分からない様なw




 カポエイラの話自体は、1900年代初頭には日本に伝わっていた模様です。 日系移民や移民を検討していた家族、それから柔道家辺りでは少しは知られていたかも。 当時、移民する人向けにポルトガル語の教本とか、ブラジルの文化紹介本などが割と出てた様ですからね。
 本書の著者ではありませんが、日本で最初にカポエイラの道場を開いたとされる、カポエイラ・ヘジョナウ・ジャパオの代表、矢部良氏は、マーク・ダカスコス主演のアメリカ映画"Only the strong"(1993年)を見てカポエイラを学びたいと思い、ブラジル大使館に問い合わせて単身ブラジルに渡航したそうですから、こういった技術書のある現在は、どれだけ恵まれているのやら。

カポエイラ2.jpg
「オンリー・ザ・ストロング」

 まぁ、80年代に日本に上陸したブレイクダンスにもカポエイラの影響がありますので、そうとは知らずにカポエイラのエッセンスに触れていた日本人は少なからずいたとは思いますけどね。

 さて、では本書の作者の紹介。 …先に違う人を紹介しちゃったけどw
 カポエイラ・アウマ・ネグラ日本支部長の三田雄士氏と、カルメン・ミタ氏による共著で、スタント俳優もなされているそうです。 1998年に在日ブラジル人よりカポエイラを学び渡伯、ここでもカポエイラを学んだ本格派。 ミタ氏は、本場ブラジルでもカポエイラの大会で準優勝を果たす実績を持ち、日本でもインストラクターとして、ダンサーとして活躍されているそうです。

 さて、カポエイラとはなんぞや、著者はこう記しています。

 「ダンス? それとも格闘技?」
 カポエイラを初めて見た人は、こう尋ねる。 しかし、本当はどちらでもない。 意地悪な言い方だが、「カポエイラはカポエイラだ」と私は答えている。 それは、カポエイラの姿をひと言で説明するにはあまりにも多様で、むしろダンスだ、武術だ、といった先入観が、カポエイラの本当の理解を妨げると思うからだ。
 ちなみに、カポエイラの本国ブラジル人は、「カポエイラは、格闘技であり、ダンスであり、武道であり、そこにはアクロバットがあり、音楽がある、そしてアフリカンカルチャーを含む、ブラジルの誇る身体文化だ」という。 加えて、「カポエイラをする」にあたるブラジルポルトガル語が、jogar/brincar/lutarなど多岐にわたることも興味深い。

(中略)
 できれば、この本を読み終えられたあなたが、「ああ、カポエイラはダンスでも格闘技でもなく、やっぱりカポエイラなんだな」と、その独自の面白さを感じてもらえれば本懐である。

カポエイラ8.jpg

 ちなみに本書に登場するカポエイリスタ(カポエリスタ)とは、カポエイラの闘士を指します。
 それでは、目次。

◆はじめに
第1章    カポエイラってなんだ?
    肉体を駆使した即興のゲーム
    カポエイラに「勝ち負け」はない
    カポエイラの集大成――ジョーゴ
第2章    知られざるカポエイラの歴史
    いまだに議論の絶えないカポエイラの起源
    迫害とともに歩んだカポエイラの歴史
    カポエイラの2大巨匠パスチーニャとビンバ
第3章    カポエイラ魂 実践基本動作
    カポエイラの基本的な動き――ジンガ
    カポエイラの基本的な動き――攻撃
    カポエイラの基本的な動き――防御
第4章    カポエイラ魂 実践発展動作
    カポエイラの発展動作――地面を使った移動・回避
    カポエイラの発展動作――アクロバット
    カウンターアタックとテイクダウン
    着地と空中感覚を得るシントゥーラ・デスプレザーダ
    メストレ・ビンバのセクエンシア
    秘伝――カポエイラの約束組み手
    忘れてはならないカポエイラの手ワザ
    カポエイラの秘伝!? 秘密のリズム
第5章    カポエイラには原始のリズムが欠かせない!
    カポエイラと切り離せない音楽
    カポエイラで用いられる楽器
    エネルギーを充溢させるカポエイラの歌
終  章    よきカポエイリスタになるために
    カポエイリスタは総合芸術家
    カポエイラとともに歩む人生
◆「あとがき」に代えて

カポエイラ5.jpg

【囲み記事】
コラム.ポエイリスタのニックネーム=アピリード。 ちなみに、私は「シンバ」。 /▲ポエイラのユニフォームはなぜ白い? /カポエイラの帯、コルダオンって何? /ぅポエイラ最強説!? 前田光世を打ち負かし、大山倍達をたじろがす /ゥポエイラの歌ホーダに神様が舞い降りたサイン
ビバ! カポエイラゝ擦汎韻犬茲Δ紡臉擇陛学 /調和の取れた美しいジョーゴ /自分が生きるカポエイラ /ぅポエイラはサーカスではない /シ慮鼎修里發里魍擇靴發 /Εポエイラに大切なのはリズム /Дポエイラでリズム感を…… /┘ポエイラは人生そのもの


 目次にもありますが、カポエイラには大会はあっても、勝敗を追究する様な事は無いそうです。 ジョーゴ(組手)をホーダと呼ばれる土俵の様な円の中で行い、肉体言語でコミュニケートしながら楽しく技術を向上させて行くのがポイントなんですかね。
 学ぶ事の楽しみ、技術向上の喜び、こういった事は日本のスポーツ界では忘れがちですから、見習って欲しい所。 強くなりたい、そう願った理由は人それぞれですが、カポエイラのあり方は貴重じゃないかな。

 んでは、歴史について。
 実はカポエイラ発祥について、未だ定説が無い様です。 本書には3つの有力な説がありました。
 1つは逃亡奴隷の共同体で生まれたという説。 白人から逃げ、森の奥地で生活していた奴隷が生み出したという事ですね。 カポエイラの歌にはこの共同体キロンボに関する物が多いそうで、有力視されている模様。
 次に、アフリカアンゴーラ地方の「シマウマの舞」を発祥とする説。 アフリカにはカポエイラでも用いられるビリンバウという楽器や似た音楽などがある事から、非常に有力な説らしいです。
 そしてセンザーラ(奴隷小屋)から誕生したという説。 ブラジルの奴隷は白人が反乱を防ぐ為に異部族を混ぜて管理していた結果、文化が融合して誕生したという説ですね。
  ちなみにブラジル外務省の紹介文書によれば、カポエイラはブラジル先住民インディオの「消え失せたジャングル」(mata extinta)を意味する言葉が語源だという説を取り上げています。 つまりは、先住民の格闘技術が源流となり、黒人奴隷たちに伝えられ、発展したという説。
 まぁ、話を総合すると、源流は不明ではあるものの、先住民の持つ文化と、アフリカ奴隷の持つ文化が融合した、という事になるんでしょう。

カポエイラ6.jpg

 そして、カポエイラ迫害の歴史へ。 1892年に正式に違法となったカポエイラ(ブラジル外務省の資料によれば1890年)は政府機関により弾圧されます。 以下本書の記述。

 ことにカポエイラは集団性を喚起し、奴隷たちに自信を芽生えさせ、反乱を起こす危険性が懸念されていた。 カポエイリスタは、2ヶ月半年以下の懲役、また指導者には、さらには重い刑が言い渡されたという。 よしんばカポエイラ以外の罪を犯して検挙されたとしても、その被疑者にカポエイラの経験が見られた場合、さらに厳しい処分が追加されたという。


 尚、ブラジル外務省の資料の方が細かいので、そちらを参考にしましたが、カポエイリスタと警察の間に何度も衝突があったそうで、特にリオデジャネイロにて「カポエイラ軍団」と呼ばれる集団が何度も大暴れしたとか。 1888年の奴隷解放や翌年の共和国宣言にカポエイリスタが関与していたとして、間もなくブラジル共和国にて違法となった、という事ですね。

カポエイラ7.jpg

 多分、こういう事です。 奴隷解放により自由を謳歌し始めた元奴隷たちは、元々の貧困とか、社会的地位辺りが問題だったんでしょうけど、ギャングが抗争なんかにも使ったりしてたと。 そうなると、法治国家としては問題にせざるを得ないですよね。 禁止にはこういった背景があった様です。

 ちなみに、1938年翻訳の「ブラジル刑法」にはカポエイラについて、こんな事が書かれていました。

 第十三章 浮浪人及カポエイラニ關スル罪


第四百二條 浮浪人及ビカポエイラガ十八歳乃至廿一歳ナル時ハ一年乃至五年間農事監獄ニ収容セシム
第四百三條 カポエイラヲ行フ際、殺人、傷害ノ罪ヲ犯シ若クハ公私ノ別ナク之ヲ侮辱シ又ハ公ノ秩序安寧ヲ紊シ又ハ武器ヲ携帯セル時ハ之ニ該當セル刑ヲ累加ス


カポエイラ10.jpg

 結果、カポエイラの勢力は弱まりますが、文化として伝承して来たカポエリスタたちの努力により、1930年代からの近代カポエイラ史が始まります。

 1932年、メストレ・ビンバ(マノエウ・ドス・ヘイス・マシャド)はサルバドールに初のカポエイラ道場を開き、上流階級も学びに来るほど社会に受け入れられました。 ビンバは、約束組手や教授法を作り、格闘技性を向上させます。 ビンバの創始したカポエイラは、ヘジョナウ派(ヘイジョナール派)と呼ばれており、ビンバ自身もトレース・パンカーダス(三撃手)と称され、敵を倒すのに3打で事足りたそうです。
 そして近代カポエイラ史に欠かせないもう1人、メストレ・パスチーニャ(ヴィンセンチ・フェッヘイラ・パスチーニャ)が1941年に同じくサルバドールに道場を開設。 アンゴーラ派と呼ばれるスタイルの中興の祖と評されるほど、カポエイラに貢献しました。
 現在では、このアンゴーラ派、ヘジョナウ派の他に、コンテンポラニアという派があるそうです。 1940年前後には誕生したとされていますが、実戦指向の強いヘジョナウ派にカポエイラショーで多用されていたアクロバチックな動きを加味したものだった様で、現在我々が目にするカポエイラとはこのコンテンポラニアみたいです。 本書には流派の違いも載っていますので、詳しくはそちらを参考にw

 さて、カポエイラの技法は非常にリズミカルで、最初に学ぶカポエイラの基本はジンガと呼ばれる前後にクロスステップを繰り返す、三角形を描く様な歩法です。 これをカポエイラの曲に合わせてステップを踏む様です。 基本的に全ての技はこのジンガから始まる事になっているので、基本こそ前蹴りですが、全体的に回転系の技が多いです。

カポエイラ3.jpg

 そして逆立ち技。 漫画の様にずっと逆立ちし続ける事は無いでしょうけど、一連のモーションを文章に書き起こすとしたら、やっぱり回転しながら逆立ちとか、そう言った誤解を生みかねない文章になるのも致し方ないかな。 実際梶原一騎先生はそういう想像をしちゃった訳だしw

カポエイラ4.jpg

 後面白いのは、飛び技以外にも足払いが多い事。 特にカポエイラの特徴だと言える、手と足を地に着けた状態での蹴りによる足払いですね。 必然的に姿勢が低くなるし、香港映画で良く見掛ける中国拳法の掃腿とはまた違った趣があります。

 最後に、カポエイラの歌。 まぁ私もカポエイラの曲がちょっと気に入って、CDとか持ってたりw

カポエイラ9.jpg

 楽器を鳴らしながら円になってジョーゴ…実に楽しそうです。 実際この音楽という要素は非常に大事な様で、映画"Only the strong"でも生徒が弓状の楽器、ビリンバウを命懸けで取りに行くシーンがありましたっけ。 本場ブラジルでは結構アドリブも利かせてたりするそうなので、ただ機械的にリズムを奏でれば良いという物でも無いんでしょうね。

 カポエイラに興味のある人は、本書と一緒に動画をオススメしますw


 という事で、三田雄士、カルメン・ミタ共著「はじける肉体の即興芸術 カポエイラ」でした。
 カポエイラは踊りと融合しているせいか、独特な風格がありますね。 派手な技に目が行き、実戦性に懐疑を持たれる方もいるでしょうけど、何も知らずに対戦したら幻惑されそうですw
 あぁ、ちなみに私が何度か名前を挙げた映画「オンリー・ザ・ストロング」はカポエイラ映画の傑作だと思います。 ストーリーはともかく、全編カポエイラアクションは熱いw
 残念ながら日本ではVHS以降出てないっぽいです。 私はアメリカからDVDを買いましたけどw
 見た事無い方にはオススメしたい所なんですが、入手は困難かな。
 そう言えば、スクエニのリズムゲーム「バスト・ア・ムーブ」でもカポエイラが出てたので、よくプレイしてたなぁ…。 とか書いてたら、久々に収録曲の「噂のカポエラ」を聞きたくなったので堪能中w
 今回はここまで、それでは、また。


参考文献:
ブラジル刑法 鈴木榮藏著 ブラジル法制研究所 1938年
フルコンタクトKARATE9月号別冊 格闘王15 マーシャルアーツ・マニア 福昌堂 1997年
はじける肉体の即興芸術 カポエイラ 三田雄士、カルメン・ミタ共著 現代書林 2005年

参考映像:
ONLY THE STRONG, Twentieth Century Fox Film, 1993

参考リンク:
駐日ブラジル大使館 Texts of Brazil - カポエイラ (05/04/2014)
カポエイラ アウマ・ネグラ (05/04/2014)









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コメント
1985年頃だと思うのですが、NHKの「海外の話題」で「ブラジル空手・カポエラ」としてTVで紹介されました。
(録画しているはずですが、すぐに取り出せない為、記憶で書いています。詳細違っていたらすみません。
放送日はメモしていない為、他の収録番組からの類推です。)
スピーディでリズミカル、W.オリバー選手を彷彿とさせるような動きに、正直なところ「凄い」と思いました。
「地上最強のカラテpart2」が カポエラの映像を初めて?広く公開した功績は認めますが、映画で紹介されたことがカポエラにとっては不運だったと思います。映画をみた誰もが「カポエラ=?」と感じた事でしょう。
このNHKの番組のような映像が使われていれば 日本におけるカポエラに対する認識は かなり違ったものに
なっていたと思います。

映画「オンリー・ザ・ストロング」、レザーディスクを持っています。レザーディスク機が使える状態で
ないので見返す事ができないのが残念です。
ジャケットのキャッチコピーを引用すると

カポエイラ秘技中の秘技「トリプル。ツイスター」が炸裂する!
「ダブル・インパクト」「ライオン・ハート」の2作品でジャン・クロード・ヴァンダムの人気を決定づけたアクション・ムービーのプロフェッショナル、シェルドン・レティッチ監督作品。本作ではブラジルを起源とする伝統的格闘術・カポエイラをフィーチャー。側転・跳躍、回転、等、リズミカルで舞のように優美な格闘技「カポエイラ」の魅力が全編にわたって炸裂する、ユニークなアクション映画。主演はマーシャル・アーツの全米チャンピオンの経歴を持つ、アクション映画界のニュースター、マーク・ダカスコス。


機会をみて再生してみようと思います。「トリプル・ツイスター」 どんな技だったのか楽しみです。
  • 烈山
  • 2014/05/10 3:27 AM
>烈山さん

情報ありがとうございます。

確か1960年代に雑誌にカポエイラが載った時も「ブラジルの空手 カポエラ」というタイトルだったので、皆思う事は一緒なのかなw

「地上最強のカラテ」に出たのが、多分アンゴーラ派のカポエイラですね。 本場のサルバドールに行けばもっとアクロバティックなカポエイラの映像が撮れたんじゃないかな。

…「トリプル・ツイスター」って何でしょうねぇw 2段蹴りまではあったけど、3段蹴りってあったかな…w
  • Leo
  • 2014/05/11 9:05 PM
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