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大山倍達マニアック検定

極真会館主催 第13回全日本大会プログラム (1981年)

JUGEMテーマ:空手
 


 さて、今回は1981年11月14,15日に開催された、極真会館主催のオープントーナメント第13回全日本空手道選手権大会について、レビューしたいと思います。
 この頃、実は一部若手支部長の間でも、顔面掌底ありにしてはどうか、スーパーセーフの様な防具を使ってはどうかという意見が出されており、ルール改正への兆しがありました。 まぁ、結果はご存じの通りなのですが、一部支部では顔面ありの組手なんかをやっていたんですよね。

第13回全日本1.jpg

 それはともかく、破門が解除されたウィリー・ウィリアムスに対して、前年度の全日本覇者、三瓶啓二が挑戦状を極真の諮問委員会の今村栄一に送り、侠気を感じた委員会ではウィリアムスを大会招待に動くという一幕もあり、事前に盛り上がっていたところもあるのでは無いでしょうか。
 そしてウィリー以上の逸材、とも喧伝された身長201cmのハシム・モハメット(スーダン)が話題になってたんじゃないですかね。
 2日間で2万人を動員したという今大会(2日目が1万3千人)、観客の興味は三瓶の2連覇か、それとも中村誠の王座奪還か、昨年に引き続き、若手の躍進か、この辺りが焦点だったでしょう。 結論から言えば、どれも観客の期待には応えられたのでは無いでしょうか。
 


 では、大会パンフレットの方から見てみましょうか。 白い紙の部分が年鑑的なパート、青い紙の部分が今大会のプログラムとなっており、分かり易く分離されていますw
 冒頭は前年度の大会の記事、そして本部内弟子の若獅子寮の紹介。 この年の卒寮生は島良一、脇内勉、為永隆の3名。 後は1年の記録。

第13回全日本2.jpg

 それから、システム的な記載が多いですね、規約、道則、心得や組織図など。 前年より組織体系の見直しが図られていたので、その成果でしょうか。 有段者名簿からは黒崎健時先生の名が消え、梶原一騎、真樹日佐夫の梶原兄弟の名前もありません。 大会役員ですらありません。
 実はこの年の2月、極真会館の支部長が一丸となって梶原一騎、真樹日佐夫の両名の処分を求める決議文を掲げ、大山倍達に対して直訴するという異例の事態にまで発展しており、もう組織として受け入れられなくなっていたんですね。 加えて、真樹プロダクションの雑誌「現代カラテマガジン」では極真から離れた元門下生の団体を特集するなどしており、また除名処分となった支部長が立ち上げた団体の役員を梶原先生が務めるなど、極真会館に対する反逆行為も露わという始末。
 無論、互いに言い分はあるでしょうが、極真側から見ればこういう感じとなるでしょう。 こうして、特に告知されなかったぽいですが、この年に梶原兄弟は評議員から外されます。
 ちなみにこの決議文は結構痛烈な批判を梶原兄弟に浴びせており、ちょっと引用するとこんな感じでした。

第13回全日本3.jpg

我々極真会館全国支部長一同は、本日茲に連署をもって顧問兼評議員梶原一騎ならびに真樹日佐夫両名の解任と永久除名を要請するものであります。
(中略)
館長の人の好さと優柔不断をいいことに信義と礼節をかなぐり捨てて館長に悪罵を投げつけ一方で極真会館の主人面をする彼等の行為は醜悪極まり我慢の限界を遙かに超えるものであります。
 
 それから、今回の大会に寄せる挨拶文の中に後藤田正晴先生がいるというのは中々興味深いのですが、全日本空手道連盟の常任理事でもある世界日報社の久保木脩己氏もあいさつを寄せてたりw

第13回全日本4.jpg

 この方は程なくして、アメリカ極真本部の後見人になったりします。 世界日報というと一見普通の新聞社ですが、統一教会、そして国際勝共連合の新聞社であり、久保木氏もここの会長だったんですね。 冷戦時代に共産主義と民主主義の争いの最前線で地政学的にも日本にとって当時の要衝であった朝鮮半島に近い日本で、反共主義を掲げた政治団体として政界に強いコネを持っていたので、大山総裁とも笹川良一氏とも親しい人物でした。

 んでは、本編に参りましょうか。

 Aブロック1回戦、第1試合。 かつて第10回全日本で極真に挑戦した伊東利彦が我流二段として佐藤竜也に挑み5-0の敗北で大会は幕を開けた。
 青木達也は突きによる技ありで判定勝ち。 今年も活躍が期待された「風格ある他流派」田中正文は、ウィリー・ウィリアムスと対戦する予定であったが、ウィリーは座骨神経神経痛の為、欠場。 残念な結果に終わった。
 南アフリカでは多大な声援を受けた青木達也は今大会がデビュー戦、石橋隆義より中段突きで技ありを奪い判定勝ち、田原敬三は4-0の判定で、後藤介宣を退ける。
 後年、極真史上に名を残す事になる石川支部の増田章のデビュー戦は、堂々としたものだった。 岡山の松浦馨を突きで攻め立て、左上段廻し蹴りで技ありを奪い圧勝する。
 そして昨年、初戴冠を果たし、V2の期待が掛かる三瓶啓二の1回戦。 三瓶道場を開き、稽古量以外の不安要素は無く、寺元孝志をから上段廻し蹴りで技ありを奪い、危なげない勝利。

 Bブロック1回戦、まずは昨年驚異のデビューを果たした若武者松井章圭が佐藤高弘に対し延長1回、3-0で判定勝ち。 動きが硬い。 田畑繁は岩村平衛に延長2回、3-0と薄氷の勝利。
 三好一男は小林大作に本戦、中段突きで一本勝ちと調子は良い。 昨年川畑幸一に勝って一躍名を挙げた大西靖人は、植村篤裕に本戦5-0の判定勝ち、一方の川畑はインドネシア人の対戦相手が来日せず、不戦勝となった。
 昨年初出場で3位の好成績を修め、次代のエース筆頭となった為永隆は大野木正文と対戦し、本戦5-0と順当勝ち、昨年以上の期待が掛かる。

 Cブロックの第1試合は昨年8位のルーキー、白石昌幸が山崎朝資に本戦で5-0の判定勝ち、順調なスタートを飾った。
 前田政利は阿部一男から上段廻し蹴りで技あり2つの合わせ一本勝ちと今大会に賭ける意気込みを見せる。

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 27歳の浜井識安は19歳の西川浩昭に延長1回、3-0で涙を呑んだ。
 話題の2メートルを超える巨人、ハシムは清水雅文と対戦し、14秒で上段廻し蹴り一本を奪い、会場を大いに沸かせた。

 Dブロックは本部の若手で若獅子寮々長となった竹山晴友が1回戦で大苦戦。 千葉の宮崎保之相手に延長2回までもつれ込む。 しかしここで地力の差が出て5-0の判定勝ちとなって息を付いた。
 藤原康晴は長島文秋に本戦5-0、柿沼英明は本間和彦に本戦5-0と順当に勝ち上がる。 大いに気を吐いたのは山口の古谷正気だ。 イギリス王者のデビット・キム・ヘンウッドを本戦5-0の判定勝ちで勝利。 脇内勉もイギリスの強豪ジェフ・ホワイブロウに延長1回、5-0の判定で勝利しイギリス勢を止める。

第13回全日本29.jpg

 しかし、ネパールのジャガッタ・ゴーチャンが予想外の活躍を見せ、井手迫稔に中段突きで一本を奪い勝利。 荒削りだが、野性味溢れるファイトは観客を魅了した。
 昨年三瓶に初敗北を喫し、王座奪還を目指す中村誠は、斉藤正義を中段への後ろ廻し蹴りで吹っ飛ばし、本戦5-0の勝利、2回戦へと駒を進める。

 Aブロック2回戦、1回戦不戦勝だった田中が鎬信彦を延長1回、4-0の判定勝ちを収め、期待のホープ水口敏夫は1回戦に引き続き、2回戦も不戦勝となる。 田原は大阪の阪口昌也を本戦5-0で破り、次に控えるであろう三瓶との対戦に思いを馳せる。 しかして、三瓶と石川支部の俊英、増田との対戦は意外な展開となった。
  本戦は互いに蹴りを潰し合い、突き合う展開となるが、増田は怯まず手数を繰り出す。 延長1回、同じ展開だが三瓶の内股への下段を前蹴りで潰し、攻めさせず再延長へ。 ここでも三瓶の突進を増田が止めるが、終盤、三瓶の繰り出した後ろ廻し蹴りが浅くヒット。 特にダメージは無かったが、これが効いたか、3-0で三瓶に旗が挙がる。 しかし、最高審判長の大山倍達より異義が入り、3度目の延長へ。

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 前蹴りを駆使して三瓶を止める増田だったが、三瓶の後ろ蹴りをボディに食らい、ぐらつく。 突きの打ち合いで遂に後退し始めた増田はここまで、判定は5-0となり、三瓶に凱歌が挙がった。 増田の実力を肌で感じた三瓶は試合後、自分の生徒に「増田を見たか。 あいつは十九歳だ。 みんなだって、やればできるんだ。 増田をみんな、見習えよ」と、賞賛した。

 Bブロックは松井が田畑を本戦3-0で辛勝、調子が挙がらないのか、昨年ほどのキレが無い。 優勝候補の一角、三好は黒岡八寿裕を本戦4-0で下し、アピール。 大西は昨年勝った川畑と対戦。 川畑は蹴りを中心に組み立て、大西は突きと膝蹴りで応戦する。 川畑の突きでスタミナを消耗した大西は、次第に防戦に追い込まれ、本戦で川畑が圧勝する。 結果は5-0となり、川畑が昨年の雪辱を果たした。

第13回全日本30.jpg

 期待の掛かる為永は福島功一と対戦、しかし電光石火の上段廻し蹴りが炸裂し、開始9秒で一本勝ちを収め、2日目へと駒を進めた。

 Cブロック2回戦、千葉の猛牛、白石は池田庄一を圧勝し、本戦5-0で勝利。 人気選手の柳渡聖人は草階誠に5-0で勝利。 昨年非凡なところを見せた木元正資は延長1回、中段突きで一本勝ちを収めた。 ハシムは小林正敏の粘りに押され、延長1回の判定まで持ち込まれる。 旗は4本挙がり、3回戦へ。

 Dブロック、竹山は吉岡智と対戦、下段を織り交ぜた竹山の攻撃の前に、防戦一方となる吉岡。 下段で技ありを取った竹山が5-0で吉岡を下す。 英国王者を下した古谷は余勢を駆ってか、藤原をも延長1回、3-0で勝利。
 ゴーチャンと中村金四郎の試合は延長1回、ゴーチャンが下段廻し蹴りで技ありを奪って2日目へと進む。
 中村誠と国本武市は中村が開始早々から中村が仕掛け、僅か25秒で前蹴り気味の中段回し蹴りが決まり、中村の一本勝ちとなった。  こうして、2日目へと32名が駒を進めた。

 2日目、Aブロック3回戦、田中は青木と対戦し、延長4回までもつれ込む大激戦をなった。 結局試し割り判定となり、田中が辛勝、負けはしたものの、今後の青木には期待が持てる。
 水口はここに来てようやく初試合である。 渡辺和貴と対戦し、下段廻し蹴りで技ありを奪って完勝。 勝ち上がるであろう三瓶を見据える。
 その三瓶は広島のホープ、田原と対戦するが、ここは手堅く三瓶が本戦5-0の判定勝ち。

 Bブロックの3回戦は松井と戸矢光男で幕を開けた。 松井は前日苦しい展開が多かったが、本戦で上段廻し蹴りを当てて技あり。 本戦5-0で4回戦へと進んだ。
 ついで1回戦で大賀雅裕を退けた松阪明彦が井上修と対戦、フルマークこそ付かなかったが、4-0で松阪の勝利。
  Bブロック3回戦で注目されたのは、三好と川畑のベテラン勢の対決である。 両者譲らぬ好試合となり、三好は縦回転の胴廻し回転蹴り風の技まで繰り出す。 しかし体格に勝る三好が押し込み、川畑はここまで。 本戦4-0で三好に凱歌が挙がった。
 為永と2回戦で堺貞夫を下した高品伸一の対戦は、昨年3位の為永が下段廻し蹴りで追い込み、本戦5-0で決着となった。

 Cブロック3回戦。 白石と村井一の対戦は、闘志溢れる試合振りで白石が押し、本戦5-0で勝利。
 柳渡は吉村裕と対戦、ここも本戦5-0で完勝、前田は1回戦で浜井に勝利した西川と対戦し、西川が横を向いたところで左上段廻し蹴りが見事に決まって一本。
 話題のハシムは昨年のデビューで将来性を感じさせた木元と対戦。 木元は約30cmの身長差を物ともせず果敢に下段蹴りで前に出るが、帯の辺りに右の膝蹴りがカウンターで決まり、木元は技ありを奪われる。 その後も中に入る木元に対して膝蹴りで対抗するが、掴みの注意を取られて減点。 ここで木元が突きで懐に入るが身長差もあってか、ハシムの中段突きが木元の顔面に当たりダウン。 ダメージはかなりあった模様だが、本戦はハシムの技ありが減点1によって相殺され引き分け、延長に入る。 延長では再びハシムの突きが顔面に入り、木元は顔を押さえてダウン。 出血もありドクターの診察の結果、木元の下顎が骨折、歯も3本折れた為、ドクターストップによりハシムが4回戦へと進んだ。

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 Dブロックの3回戦。 竹山は宮本信之と対戦、粘る宮本に対し、中々活路を見い出せない竹山は延長2回でようやく判定5-0と、苦しい試合が続く。
 英国王者を下した古谷は、早稲田の岸田三利と打撃戦を繰り広げるが、勢いに乗る古谷が延長1回で4-0の勝利を得た。
 本部内弟子を卒寮したばかりの脇内は、ネパールのゴーチャンと対戦、本部内弟子としては負けられない対戦だったが、延長1回、地力で勝る脇内が5-0で判定勝ち。

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 3回戦最後の試合は、中村誠と中村仁という中村同士の対戦。 身長は両者さほど変らないが、中村誠の方が30kgほど重い。 しかし試合の方は中村が技ありを立て続けに取り、最後は突きで合わせ一本勝ちとなった。

 4回戦に進んだのは以下の選手。

 Aブロック:佐藤竜也、田中正文、水口敏夫、三瓶啓二
 Bブロック:松井章圭、松阪明彦、三好一男、為永隆
 Cブロック:白石昌幸、柳渡聖人、前田政利、ハシム・モハメッド
 Dブロック:竹山晴友、岸田三利、脇内勉、中村誠


  Aブロック4回戦、昨年は3回戦で足止めを食らった田中と佐藤の対戦は、両者一歩も引かず、延長3回で佐藤に1本旗が挙がるも決着とならなかった。 結局、試し割りの合計枚数で田中が辛勝、遂にベスト8へと進出した。

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 昨年王者の三瓶は2連覇を目指して水口と対戦。 前日三瓶を苦しめた増田と同じ石川支部の指導員だが、下段を効果的に使い水口が食い下がり、延長3回までもつれ込む。 しかしここでスタミナに定評のある三瓶が、疲れを見せた水口の足に下段廻し蹴りを叩き込み、遂に技ありを奪う。 最早水口にこれを取り返す力は無く、延長3回5-0で三瓶が勝ち上がった。 負けはしたものの、今大会でチャンピオンの三瓶を追い込んだ増田と水口の石川支部の活躍が光った。

 Bブロック4回戦、松井と松坂の対戦は技のある同士による動きのある試合となったが中々決定打が出ず、延長2回で松井に旗が挙がり、4-0で松井は2年連続ベスト8へ。
 三好と昨年3位の為永は本部の同門同士の対決となった。 先輩の三好は意地を見せるが今年更に飛躍を目指す為永も負けていない。 結局延長3回でも決着は付かず、試し割り判定により三好が為永を退けた。

 Cブロック4回戦は昨年初出場でベスト8に進出した白石は、今年更に上位を目指すべく、柳渡とベスト8への席を賭けて争う。 両者共に激しい組手を得意とするファイタータイプだが、体が一回り大きい白石が下段蹴りで攻め、柳渡が突きを中心に打ち合う。 途中、前転蹴りまで繰り出す柳渡であったが、次第に体格で勝る白石が、定評のある下段廻し蹴りで柳渡を圧倒、本戦5-0で2年連続、準々決勝へと進んだ。

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 前田とハシムの1戦は懐に入ろうとする前田をハシムが前蹴りで吹っ飛ばしたが、バランスを崩しただけで技ありにはならない。 接近して突きを連打する前田を掴みからの膝蹴りで応戦してしまい、注意を取られるが、本戦はハシムに旗が1本挙がっただけで、引き分け。 延長では試合が荒れて来た。 接近戦でハシムが前田を投げた辺りから雲行きが怪しくなり、ハシムの掴みからの膝蹴りを連打したところで副審から笛が鳴り、主審の松島良一が間に入るがエキサイトしたハシムが前田を蹴る。 これに怒った前田が突きを返すと、ハシムが興奮し暴れた。 その後も掴みが目立ち、ハシムに減点1。 延長を終え、前田に旗が1本挙がるが、再延長となる。

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 再延長ではハシムの上段廻し蹴りに合わせた前田の下段により転倒、慌てて立ち上がったハシムが前田を突き飛ばすと、倒れた前田に蹴りを入れる。 その後もすぐに掴むハシムに減点1が与えられ、これが響いて5-0で前田の勝利。 外国人を止め、初のベスト8入りを果たした前田は両手を挙げてガッツポーズ。
 
 Dブロック4回戦、竹山と岸田の対戦は調子の挙がってきた竹山が岸田を攻めて本戦5-0で竹山の勝利。

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 昨年も当たった中村と脇内だったが、中村の体格とパワーを利した組手に場外に追われる脇内。 昨年のリベンジ成らず、本戦4-0で中村が勝利した。

 ベスト4を賭けたAブロックの決勝は共に延長を繰り返し、苦しい試合を勝ち上がって来た他流派の田中と昨年の覇者、三瓶。 開始早々、前に出る田中を三瓶が突きの連打で迎え撃つ。 手数はあまり出ないが三瓶の連打を身に受けながら前進する田中の動きが次第に鈍る。 棒立ちになりながらも常に前に出ようとする田中だったが、三瓶の下突きが入った所で膝を着く。

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 そのまま三瓶の一本勝ちとなったが、堂々と全日本王者に真正面から挑んだ田中には盛大な拍手が贈られた。

 Bブロックの決勝、昨年は負傷してギプスをしたまま初出場の松井と対戦し、涙を呑んだ三好が再び対戦する事となった。 下段の蹴り合いから始まったこの試合は、足技では松井に分があり、三好が押し込まれる。 しかし突きでは三好の方が上である。 突きの応酬から三好の右正拳が松井の顎を打ち抜きダウンする一幕もあったが、両者譲らない。 場外間際で松井の上段蹴りを受けて倒れ込む展開も見られたが、立ち上がった三好は闘志溢れる表情で松井を睨む。

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 本部の先輩としても負けられない所だ。 本戦は0-0の引き分け。 延長戦でも一進一退の攻防は続き、ここでも引き分け。 しかし再延長では三好の疲れが出たか、松井の方が手数が多い。 最後に松井の下段が入った所で再延長終了。 旗は松井に4本挙がり、三好は雪辱を果たせなかった。
 
 Cブロック決勝は昨年に引き続きベスト8まで勝ち上がって来た白石と、前田の対戦。 徹底的に下段廻し蹴りで前に出る白石に対し、下段に上段廻し蹴りを織り交ぜて応戦する前田だが、白石の突進に後退を余儀なくされる。

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 ハシム戦の影響もあるのだろうが、左足を効かされた前田は防戦一方となる。 本戦終了直前、前田が起死回生の飛び前蹴りを放つも、不発。 本戦5-0で白石が初のベスト4進出となった。

 Dブロックは中村と竹山の1戦。 真っ向勝負を挑む竹山だが、中村の攻撃力はずば抜けている。 何度も場外に押し出される竹山、そのまま流れは変らず、本戦5-0で中村の優勢勝ちとなった。

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 準決勝第1試合、昨年と同じ三瓶と松井の対戦。 V2を目指す三瓶と雪辱を果たしたい松井との試合である。 突きで攻める三瓶と蹴りで応戦する松井という展開。 前に出る三瓶に対して再三、上段廻し蹴りや後ろ廻し蹴りを狙うが、ディフェンスの巧みな三瓶は食らわない。

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 鋭い右上段廻し蹴りが三瓶を襲い、ひやりとするシーンもあったが、ここで試合終了。 本戦5-0で三瓶が圧勝したが、昨年の様に防戦一方にはならなかった松井も評価すべきであろう。 今後の課題は接近戦である。 三瓶は笑顔で松井に話し掛け、決勝に向けてマットを降りた。

 準決勝第2試合は、約20cmの身長差がある白石と中村。 白石は左の内股蹴りが良く出るが、中村は左の中段廻し蹴りで対抗。 圧力で負けない様に右足で踏ん張る為か、いつもの下段連打とは様相が異なる。 抱えての膝蹴りで中村に注意1が与えられ、試合続行。 横の動きが無い白石は怯む事無く中村に挑む。 ここで中村の掴みで減点1。

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 この辺りから白石は苦しくなって来たか、中村の攻撃に押し込まれる。 場外で試合が止まると上を見上げて息を上げる白石。 本戦は減点1が響いて0-0の引き分け。 旗が挙がった後の白石の苦しそうな顔は印象的である。 延長戦で中村の下段や下突きに、必死に応戦する白石だが、最早波間に揺れる小舟の様な物である。 中村に頭を着けて耐えるのが精一杯だった。 判定は5-0で中村。 最後まで耐え抜いた白石は立派だった。

 3位決定戦は昨年も顔を合わせた松井と白石。 先制打は松井の二段蹴り、再三繰り出される高い蹴りをかいくぐって白石が下段で突進という展開。 何度か後ろ廻し蹴りが白石を巻き込むが本戦は0-0の引き分け。 延長では下段足刀を狙う松井。

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 両者アグレッシブに動くが、旗が松井に1本挙がり、再延長へ。 再延長は松井の上段と白石の下段が目立つ展開となったが、松井の的確な下段がポイントとなったか、判定は3-0で松井へ。 松井は昨年より1つ順位を上げ、白石も初のベスト4入りという快挙を成し遂げ、若武者達の闘いに幕を下ろした。

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 決勝は通算4度目となる三瓶と中村の対戦。 ここまでは中村の3勝、三瓶の1勝だ。 互いに手の内を知り尽くした者同士の対戦だけに、クリーンヒットを許さない。 中村の下突きが大きく振り出され、打ち下ろしの中段突きを捌くと、三瓶は不敵な笑みを浮かべる。 俺は中村と対等になった―あるいは中村を超えた―そう実感したのだろうか。 本戦は0-0の引き分け。 延長は三瓶の細かい突きの連打が目立つ。 大きな攻撃の多い中村のスタミナを削る様な攻撃。 接近戦はあるが、互いに掴みも少なく、中距離からの出入りが頻発する綺麗な試合である。 しかし中村に顔面殴打と掴みで減点1が与えられ、判定は2-0で三瓶優勢の引き分け。

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 再延長、左の蹴りで攻め込む中村に対して三瓶は突きの連打で応酬。 中村の勢いが落ちて来たか、中段突きを嫌がる。 手数は中村の方が減ったが、判定は0-0で3度目の延長へ。 見合う場面も増えて来たが、中村が一打逆転の後ろ廻し蹴りを放つと、三瓶は回り込んで中村を引き倒す。 前には出るものの、三瓶の方が先に仕掛ける局面が増える。 そこで中村の顔面殴打が入り、自分から攻めないと駄目だと悟った中村が果敢に攻撃を仕掛ける。 しかし、三瓶の反撃で一瞬手が出なくなった所で判定、0-0と試し割り、体重判定へともつれ込むが、大山倍達最高審判長の提言により、特例の4度目の延長へ。 こうなるとスタミナに不利のある中村の方が辛い。 開始前に副審を集め、大山茂主審が注意の厳格化を徹底させる。

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 中村を中心にして回りながら攻め込む三瓶と、直線に突き入れる中村。 中村の掴みに注意1が与えられるも、延長4回とは思えないほどの激しい攻防を繰り返す。 決定打を許さない三瓶に対し、再び中村に注意1。 再会後にまた掴んで膝蹴りを入れてしまい、注意が与えられる。 ここで試合終了。 注意が3回与えられた中村は天を仰ぐ。 判定は5-0で三瓶の2連覇達成となった。

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 門下生に胴上げされ、宙を舞った三瓶、夜の上位入賞者慰労パーティでは恒例の「男なら」を、ライバル中村と共に熱唱し、最高の1日を過ごした。
 
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優勝:三瓶啓二
2位:中村誠
3位:松井章圭
4位:白石昌幸
5位:三好一男
6位:田中正文
7位:竹山晴友
8位:前田政利


 大山倍達最高審判長による総評。

 大会当日に、何と徹夜までして会場に並んでいただいた熱心な一般支持者の方々等々へ、私は「有り難い」という言葉を、いかにして表現すればよいか分からないようなありさまです。
 本当に有り難うございました。

 (中略)
 大会は素晴らしい好試合の連続で彩られました。 優勝者から八位入賞者までは無論のこと敗者もまた悔いが残らぬ健闘を見せてくれたことを、私は大い称賛します。 三瓶啓二、中村誠といった強豪に、一歩もひけをとらずに敢闘した選手諸君。 また他流派でありながら立派に上位入賞を果たした田中正文選手には、まったく頭が下がる思いでいっぱいです。
 (中略)
 王者・三瓶と二回戦で対戦し、優るとも決して劣らない大健闘を演じた増田章君。 また惜しくもベスト8進出は成らなかったものの、やはり同じく三瓶君を向こうに回して、延長に次ぐ延長を闘い抜いた水口敏夫君。 さらには準決勝で、約四十キロも体重のちがう巨漢・中村誠に臆することなく必死で食い下がり、奮戦の末四位に入賞した白石昌幸君らなど、まことに目を見張るような活躍ぶりだったと記憶しています。 私は彼ら若き獅子こそ、今後の空手界を担うべき有望な人材であると、期待とともに信じます。
 (中略)

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 誤解してはならないのは、カラテはあくまで"空手"であり、決して"空足"ではないということです。 蹴るだけが空手ではありません。 やはり止めをさすのは、正拳一撃必殺、"手"なのです。 この意味において、突き、蹴りのバランスのとれた好試合が続出下今回の第十三回大会は、大きな収穫であったと言わねばなりません。
 常に渡しが声を大にして申し上げるように、私たちは今後、従来の空手ではなく、格調高い品格のある空手を目指し、あらゆる中傷・誹謗に立ち向かって行きたいと思います。
 新しい格調高い品格のある空手とは、宇宙の摂理にかなったカラテ、地に則った基本、定義にそう華麗なる組手を礎とした理念のあるカラテのことです。

 (中略)!
 第十三回オープントーナメント全日本空手道選手権大会を空手史の一ページに残るような盛況に盛りたてて下さった方々に、いま一度感謝の意を捧げ、皆さま方のご健勝を切に祈念いたします。
 有り難うございました。 押忍

 
 
  という事で、極真会館主催、第13回オープントーナメント全日本空手道選手権大会でした。
 いや、今回は腰痛が久々に神経まで来てたので、書き始めたのが先月なのに、途中から座るのが辛くて、全然筆が進みませんでしたw
 今は薬と座椅子により相当楽にはなりましたけど、大変でしたw
 さておき、今回の三瓶啓二先生の全日本2連覇は「史上初」と呼ばれてはいるんですけど、第1回世界大会は「第7回全日本を兼ねる」ので、実質的には佐藤勝昭先生が大会史上初の2連覇となります。 よって、その手のキャッチは入れませんでした。
 今大会、三瓶先生の突きの連打が目立ちましたが、次大会ではこの印象を吹き飛ばす様な試合運びをする事になります。
 まだまだ本部勢が強いですけど、かつての愛媛支部や宮城支部、東京都下埼玉支部の様に、石川支部を筆頭に地方支部の選手が台頭して来てますね。 ここから第15回大会くらい辺りまでに本部を巣立った内弟子たちが各地で支部を開設し、更に若獅子たちが育って行く事になります。 地方大会の充実、首都圏交流試合、そしてウェイト制大会と、活躍する場が増えて行くに連れ、この傾向はますます強くなるでしょう。
 今回はここまで。 それでは、また。


参考文献:
第13回オープントーナメント全日本空手道選手権大会プログラム 財団法人極真奨学会 1981年
月刊パワー空手 1981年5月号 パワー空手出版社 1981年
月刊パワー空手 1981年8月号 パワー空手出版社 1981年
月刊パワー空手 1981年12月号 パワー空手出版社 1981年
月刊パワー空手 1982年1月号 パワー空手出版社 1982年
現代カラテマガジン 1981年12月号 真樹プロダクション 1981年
現代カラテマガジン 1982年1月号 真樹プロダクション 1982年
極真カラテ年鑑第2号 燃えろ! 極真魂 講談社 1981年
わが師大山倍達 1200万人への道 睫攘庵 徳間書店 1990年

参考映像:
第13回オープントーナメント全日本空手道選手権大会 テレビ東京 1981年









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コメント
  • 元極真オヤジのつぶやき
  • 2014/06/08 9:38 PM
このプログラムの表紙は、自分のいた支部のチャンピオンの吉岡さんの12回大会の模様がイラストかされたもので、当時はそれだけで大喜びでした。
今回紹介されている竹山対吉岡戦は、始めの突き合いに観衆から拍手がおこるほどのものでしたよ。
  • kim
  • 2014/06/09 11:24 PM
三瓶選手の豪快な勝ち方を期待して見に行ったのに、若い増田選手が物凄く頑張ったので、私的には少し不満が残りました(笑)
  • やいや
  • 2014/06/10 9:28 PM
どうもありがとうございます。この大会はテレビで見たきおくあります。冒頭のダイジェストでのハシム選手のKOシーンありました。
決勝での三瓶さんの前蹴りの受け、下段払いの上手さ。あと、ハシムが前田選手を投げ飛ばしたシーン。思い出しますね。
松井さんは、高い蹴り多かったですね。
  • 昔極真マニア
  • 2014/06/12 8:25 AM
>元極真オヤジのつぶやきさん

自分で撮影したのならいいですけど、著作権物は基本違法ですからねぇ。
テレビ局に現存しているのなら、どこかで買い取って販売して欲しい所ですw

>kimさん

あ、表紙の吉岡先生とは知りませんでした。 初戦は一本が出ない限り、中々テレビでは写らないのでそういった雰囲気を教えて頂けると嬉しいです。

>やいやさん

三瓶先生は大会を通じて調子悪かったのかも知れませんね。 対戦相手が全般的にタフで精神力が強かった、というのもあるかも知れませんが。

>昔極真マニアさん

いえいえ。
松井先生は自身の得意技でもあった、というのはあるんでしょうけど、山崎照朝先生に憧れて、一撃を狙ってたりというのもあるんじゃないですかね。
  • Leo
  • 2014/06/12 11:05 PM
風格ある「他流派」の田中選手。実は芦原先生のもとで稽古した人だったんですね。実際には同門の人とも言えるわけでした。
  • 名誉五段
  • 2014/06/13 11:32 AM
石井豊は芦原空手の動きをしてましたが、どこで習ったのでしょうか?
  • やいや
  • 2014/06/20 5:52 PM
>名誉五段さん

そうなんですよね。元々他流派で、芦原道場に暫く通っていたとか。

>やいやさん

マサカリキックの石井豊先生ですか?
本部生え抜きの選手なので、普通に自得したのでは無いでしょうか。
  • Leo
  • 2014/06/22 8:10 PM
足しか使えないルールを押しつけながら空足とはこれいかに。

崔猛虎は自分でやってみろと言いたい(笑)
  • ヨンドンサリ
  • 2014/07/07 8:18 PM
サイドに入りながら、軽くジャンプしてスネを正面からぶつけていく蹴りは芦原道場時代行われていたものです。中山猛夫も使ってました。
  • やいや
  • 2014/07/12 1:12 AM
>やいやさん

まぁ、先駆者がいたとしても使う部位が限られている以上、同じテクニックを開発するのは特に不思議では無いかと。
  • Leo
  • 2014/07/12 9:03 AM
前田政利とハシムとの試合見た人いますか?
どっちが勝ってたのかな?
  • 鬼太郎
  • 2015/09/11 6:33 AM
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