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大山倍達マニアック検定

【レビュー】遠山寛賢著「空手道大宝鑑」(1960年)

JUGEMテーマ:空手
 

 今回は修道館の遠山寛賢先生の名作「空手道大宝鑑」を紹介したいと思います。

空手道大宝鑑.jpg

 今となっては忘れ去られた感がありますが、遠山先生と言えば糸洲安恒先生の高弟として知られ、戦後には空手の本家争いで船越義珍先生と論争を繰り広げた事もあります。 ちなみに船越先生は本部朝基先生とも戦前に同様の論争を繰り広げてますねw
 修道館は現在閉館しているようですが、遠山先生の高弟には日本空手道研修会の金城裕先生や韓武館(現・練武会)の尹曦炳先生がいらっしゃいます。
 その為、全日本硬式空手道連盟 全日本空手道連盟錬武会の最初期の組織、全日本空手道連盟(現在の全空連はこの名称を譲り受けた)の総本部は師である遠山先生にお願いし、この修道館が全空連の総本部となっていました。
 勿論、その技量も達人として知られておりましたが、直系の道場が無くなってしまった様で淋しい限り。





 さて、本書「空手道大宝鑑」は2種類あり、多分手元にあるのが1966年以降の再版分だと思いますが、奥付見ても発行年月日の記載がありませんw
 なのに何故発行年度が分かるかと言うと、最初に「故遠山寛賢先生」という記述があるからです。

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51gtB6THSuL._SL500_SY344_BO1,204,203,200_.jpg
初版

 ただ、どちらの版も、今買うとなったら底値でも2〜3万くらいはするんですよね…。 鶴書房の格闘技本はいずれもプレミアが付きますが、本書はその中でも相当レアな部類になるでしょう。 内容の方も最後の付録もそうですが深い物となっています。
 まずは目次。

    目次
推薦の辞
まえがき

第一篇 総論(基礎論)


 第一章 空手道
    一 定義
    二 起源
    三 価値
    四 流派
    五 唐手より空手へ
    六 空手の進出

空手道大宝鑑3.jpg

 第二章 空手道の精神
     一 道徳訓
     1 守礼のくに
     2 空手に先手なし
     3 忍は百行の基なり
     4 手が出たら意地を引け、意地が出たら手を引け
     5 柔即和、剛即和
     6 喧嘩争いは買っても棄てよ
    二 空手する者の心得

第二篇 各論(組織論)
 第一章 拳の握り方
 第二章 拳の突き方
 第三章 貫手と手刀

     1 貫手
     2 貫手の鍛錬法
     3 貫手の威力
     4 貫手の種類
     5 手刀
     6 手刀の用法

空手道大宝鑑7.jpg

 第四章 立ち方
     1 結び立
     2 閉足立
     3 丁字立
     4 八字立
     5 内八字立
     6 四股立
     7 ナイファンチ立
     8 猫足立
     9 前屈立
     10 後屈立
 第五章 足の技
     1 蹴り方
     2 蹴り方の種類
 第六章 腕技
     1 猿臂
     2 猿臂の種類
     3 猿臂の用法
 第七章 巻藁の作り方
     1 立巻藁
     2 提巻藁

第三篇 型と組手
     1 空手の型
     2 基本型

        ナイファンチ初段の型
        ナイファンチ二段の型
        ナイファンチ三段の型
        平安初段の型
        平安二段の型
        平安三段の型
        平安四段の型
        平安五段の型
        チントウの型
        パッサイ大の型
        知花公相君の型
    3 奥技 古流五十四歩の型
    4 組手

第四篇 棒術と釵術

    1 沖縄の妙技 棒術
    2 天竜の棍
    3 釵術

第五篇 女子の護身術

空手道大宝鑑9.jpg

第六篇 奥技と秘術(極意)


    1 複式呼吸法
    2 獅子の法
    3 虎の法
    4 握力法
    5 鍛眼法
    6 熊の手
    7 三角飛び

付録
    沖縄空手道大家の座談会



 えーどっから始めようかな。
 とりあえず、まぁ、大山倍達総裁も実はそうだったんですけど、空手に流派無し、というスタンスですね。 極真も初期は「極真会館空手」と名乗っていた事から分かる通り、「極真会館で教えている空手」という意味であって、「極真会館流空手」という事ではありませんでした。
 さて、遠山寛賢先生の意見は大雑把に言うと、妙術に何手も変った手がある筈が無かろう、という事です。

空手道大宝鑑4.jpg

 興味深いのは糸東流と剛柔流に関しては本人に直接聞いたというところかな。 曰く、ちょっと長いですがこんな感じ。

 糸東流を十余年前に名乗った関西の摩文仁賢和君に、著者が以前流派を名のったその真意を質したことがあったが、返事はいたって簡単であった。 曰く、単に空手道というより、流名をつけた方が格好がつくし、恩師を思慕する意味からも意義がありはしないか。 要するに、軽い意味で名のった流名で、あなた方(遠山)の意向をきいてから名のるのが順序でしたとの返事であった。
 摩文仁君の空手は、私たちとまったく同じく糸洲、東恩納両拳聖の他に新垣翁や山之根大城翁、松村翁の息も多分にうけて研究している。 要するに、私たちや摩文仁君の空手は拳聖松村、糸洲、屋部、大城など古今の名人大先哲の全流れを総括統合した唯一の正統空手道であって、流も派もない正真正銘の沖縄の空手で流名は結局、無意味に帰するわけである。
 最後に宮城長順氏の名のった剛柔流について検討してみよう。 宮城氏は著者と同年の生れである。 人格武技ともに優れた、生れながらの空手家であった。 東恩納翁の高弟として、その奥技を極めた宮城君が、どんな錯覚をおこしあのか、自分の空手に剛柔流とうっかり名のってしまったのである。 著者が昭和十一年帰省した折、那覇商業学校で宮城君に会って流名をつけたその無意味を詰問したことがあった。 宮城君が答えたことは、剛柔流と殊更に流名をつけた動機は世間の人びとが、未だに空手に対し認識不足なので、その全貌を剛柔の二字でわかりやすく表現したということであった。
 およそ徒手空拳の空手は、法の如何を問わず、すべて剛法柔法の二法の範囲を出ないのである。 拳闘は空手の剛法(ただし足技はほとんどない)であり柔道は空手の柔法(ただし当身術は剛法である)である。
 空手を剛法だけと考えている人があるが、空手を知らない人の誤りである。 空手武術は剛法柔法の二法を包含している武道であって、柔法にも柔剛の使い分けがあり、剛法にも柔剛の使い分けがある。 法の柔剛と使い分けの柔剛が、千変万化の妙技となって現われるのである。 すなわち、突、貫、切、蹴、踏逆技は剛法であり、投、倒、押、絞、捕技は柔法である。 要するに「空手は剛柔陰陽の二法を出でない武道である」につきるのである。


 ちなみに現在では流名を名乗った一番の理由は、大日本武徳会に登録する際に流名が必須だったからだと言われてますw

 唐手が空手になった話も書いてますね。 1905年頃までは「手(て/でー)」と読んでいましたが、この年に沖縄の中学で空手が正課となり、「唐手(からて)」と読ませる様にしたそうです。 同じく同年、県立一中の空手師範だった花城長茂先生が8月に「空手組手篇」という文献を書いており、これが初めて「空手」と書かれた資料だと言われています。
 そして1936年10月、琉球新報社と空手研究社の計らいで当時の空手界の拳豪が集まり、正式に「空手」と名称が決まりました。 この貴重な座談会は長らく原本が見付かっていませんでしたが、2006年になって沖縄県の公文書館所蔵の湧川清栄文書から発掘されました。
 この時の座談会は多少沖縄の達人に詳しい人なら驚くほどの大家が一堂に会してます。 以下が出席者(空手家のみ)
 花城長茂、喜屋武朝徳、本部朝基、宮城長順、許田重発、知花朝信、城間真繁、小祿朝禎、仲宗根源和

空手道大宝鑑1.jpg
座談会時に撮ったと思われる写真

 座談会については、後ほどまた書きます。

 基本はいいかな、ちょっと型について書きましょうか。 ちなみに、ウチのブログでは極真系は「型」、伝統系は「形」と書く様に分けているんですが、遠山先生は「型」と書きますね。
 さておき、「空手道大宝鑑」というだけあってか、12種類の型が収録されています。 型についてはこう書かれています。

 空手の型は攻防武技の連続体である。 昔の拳聖達人が幾星霜、超人の難行苦行をへて理技両面より基本となるべき妙技を、系統的に聯結組合せて編み出した臨機応変、千変万化する理想技である。 空手の型は空手の生命であり、真髄極意をきわめる最高唯一の道程である。
(中略)
    型なくして空手なし
    真髄奥技なき空手は単なる体操である。


 さて、本書には本邦初公開だという知花公相君(平たく言うとクーシャンクー/観空大)の型を披露しています。 曰く―。

空手道大宝鑑5.jpg
知花公相君の型

 この知花公相君の型は、秘密時代の大家の教授法といわれるもので、明治時代における、沖縄においての空手道の研究修業は、ごく少数の首里城下の名門の人々が、親兄弟にも知られない秘密のうちに行ったものであった。
 それは拳聖大先生が、師範又は二、三段以上の武士の位置にある者に対して、ある課題を与えて、二通りまたは三通りの開設をして来いと命じた空手研究教授法による型である。 げんざいこの型を体得しているのは、知花君と著者以外には皆無で、従って今までに出版された空手の本には、全く発表されたことのないものである。


 現在ではこの知花公相君の型も動画サイトなどで見られますので、自流の型と見て比べてみると面白いかもですね。 背後に蹴り出した後に前を向いて備えるところなど、極真の観空と比較しても、正直こっちの方がいいなーと思いますw
 それから奥技として古流五十四歩が載っていますね。 ちなみに大山茂先生が「地上最強のカラテ Part2」で披露してた「ツーシホ」の型は、極真時代の自伝に「古流つうしほ」として載っていましたが、極真の五十四歩は色々違いますw 最初の三歩とか他流に無いし、掻分けが三戦になってたり…どっからそうなったんだろう?

空手道大宝鑑6.jpg
掻き分け

 んで、約束組手がありますが、猫足立ちでの組手とか、投げ技や関節技なども載っていました。
 他には武器術…棒術やサイが載っています。 ヌンチャクは残念ながら載っていませんでしたが、本書にヌンチャク術の事も書いていたので、多分指導されてたんじゃないかなぁ。

空手道大宝鑑8.jpg

 そして、これは遠山先生しか書けないであろう、糸洲安恒先生の奥義と秘術の話。 本土の空手には技としての奥義という概念が無いですもんね。

    奥技は凡技に始り
    凡技は奥技に終る
    始めに奥技なく、終りに奥技あり
    なるならぬの鍵は鍛錬が握る。


 つまり、個人技も立派に奥義に至ると言えますが、本書では空手の奥義を紹介しています。
 まず、複式呼吸法(腹式呼吸法では無い)にて丹田を鍛えるところから始まります。 吸いながら吐き、吐きながら吸うという2つを同事に行なう呼吸法で、これにより、弾力性に富んだ身体を作る事が出来る様です。 進駐軍の米兵数名に戦後、殴る蹴るの暴行を加えられた時にもこの呼吸法で身を守ったとの事。

 獅子の法。 メッチャ大雑把に言うと、頭突きですw
 ただ、頭突きを打つ際の技術が秘伝になっていますね。 こういう風に打つのか、と感心しました。

 虎の法は糸洲先生の奥義だそうで、中高一本拳を左右同時に別々の回転で猛烈な打突を加えるという技です。 本書にはもう少し細かい説明がありますが、試した感じ、これを当てるのは難しそうな…攻撃力を出すのも大変そうですが、正に「なるならぬの鍵は鍛錬が握る」ですね。 本書に書かれていない部分では、きっと当てるまでの要訣もあるんじゃないですかね。

空手道大宝鑑2.jpg
虎の法

 握力法は、瞬間的に強大な握力を発揮するという技法ですね。 丹田の力を使っているとの事ですが、これは説明が難しいなぁ…。 大山総裁もこの握力法に似た技術を使っていたのかも知れませんね。

空手道大宝鑑10.jpg
握力法

 で、鍛眼法。 3つの錬成法から成る鍛錬ですね。

 熊の手、これは…握力法を使って、組技を外す技術ですかね。 簡単に言うと、ギューと握っちゃう訳です。 どこでもいいからw
 今の空手家はともかく、昔の空手家は握力に関する逸話が多いです。 牛肉を千切ったり、孟宗竹を握り潰したり、梁に指でぶら下がったりと。 大山総裁もそうでした。 皿の握った所だけ千切ったとか、石を両手で握って折ったり、10円玉曲げはその最たるところでしょう。

 最後の奥義は三角飛び。 そう、「空手バカ一代」にも出て来るあの三角飛びです。 一部技術書では跳び足刀蹴りを三角飛び蹴りだ、と書いていた事もありますけど、これは正しくありません。 以下説明文。

 普通に至難の技と言われたのは、はじめから、各点の距離が、遠いことを想定してのことで、各点間が一メーターくらいの間隔をとれば、何のことなく素人でも三角に飛べるが、各点間が三メーターとなり、五メーターと離れた場合の三角飛びになると、霊技となるのである。
 この域にたっするまでには、不断の努力と錬磨が物をいうことになる。
 この三角飛びには二つの方法がある。
 その一 直角飛び
 直角とは、水面に対する直角のことで、即ち一定の地点に立つ飛躍体勢から、強く踏んばった左足を軸として、右側面の人を右足で蹴飛ばし、さらにその反動をもって、左我が三角地点に立つ人を蹴飛ばすのである。
 その二 平行飛び(水平飛び)
 水面に平行して飛ぶことで、一定の地点から水面に平行急飛躍した足で、右側の人を蹴飛ばし、その反動で三角地点に立つ左側の人を頭部で攻撃するのである。


空手道大宝鑑11.jpg

 最後に付録の座談会、これが貴重です。 しかも建設的な話で、武徳会に「唐手」と登録したので、改称するには武徳会にも認可を受けないといけないという話をしていたり、ちゃんと空手を統一型でまとめようとしており、その為に空手振興会を組織しようとしています。 これが成っていれば、今ほど流派乱立する事は無かったかもですね。

 「空手道大宝鑑」は、紹介した通り、他の技術書とかなり異なる内容になってます。 機会があったら是非読んで頂きたい一品ですね。


 と言う事で、遠山寛賢著「空手道大宝鑑」でした。
 大山倍達総裁も出稽古に行っていた韓武館の尹曦炳先生、同じくここに所属していた経験のある金城裕先生といった先生の師という事もあって、何らかの影響を受けていたとしてもおかしくありません。

空手道大宝鑑12.jpg
旧全日本空手道連盟

 遠山先生と直接お会いした、という話は聞きませんけどねw
 船越義珍という人物は日本における空手の最大のキーパーソンではありますが、松濤館を中心とした本土の空手史観の影響から、その他の空手家が忘れ去られがちです。 私個人としては関西や九州、そして東京でも空手の普及に貢献した人物ももっとクローズアップされてしかるべきだと思います。 この辺りはもうちょっと「月刊空手道」辺りで取り扱って欲しいなぁ。
 んで、空手の奥義、面白いですね。 最近の傾向だと空手の秘伝と言えば身体操作、というのが主流だと思います。 当然遠山先生の言う奥義もこれらは重要なポイントとなっています。 しかし、具体的な技が出て来るというのはあまり無い話なので、非常に興味深い。 しかも失伝したのか、今は語る人もいないですし。
 コッカケ、行違、遠当といった秘伝の他にも、こういうものがあったのか、と読んだ時思ったものです。
 今回はここまで。 それでは、また。

※追記(2014/11/20):月読様にコメント欄でご指摘頂いた旧全日本空手道連盟に関する修正を行ないました。

参考文献:
月刊空手道 1956年7.8月合併号 空手時報社 1956年
空手道大宝鑑 遠山寛賢著 鶴書房 1960年(初版発行年度)


参考リンク:
琉球新報:幻の「空手座談会」発見 逸話、武勇伝多彩に (2014/11/16)








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コメント
全日本空手道連盟錬武会の月読と申します。

申し訳ありませんが即刻下記の部分の訂正をお願いしたい。
「全日本硬式空手道連盟の最初期の組織、全日本空手道連盟」

全日本空手道連盟に名称を譲った旧全日本空手道連盟は全日本空手道連盟錬武会です。
全日本硬式空手道連盟はその後に全空連にいた久高空観氏が開発したスーパーセーフを用い、久高氏の少林寺流拳行館、日本正武館を中心に組織された団体であって、全空連とは直接関係ありません。

さらに久高先生の元から離れた全日本硬式空手道連盟(千葉派)に錬武舘を名乗る団体もおりますが、錬武会から離れて硬式空手に移ったかつての錬武舘数支部の一つに過ぎません。

我々錬武会のかつての総本部大師範であった遠山先生の事をこのように再評価していただいた事には心より感謝し、また日頃より貴殿の空手に対する研究心には敬意を表しますが、だからこそ、このような誤記を軽率に書かれますと我々としても困ってしまいます。

突然の書き込み大変失礼と思いつつも、何卒よろしくお願い申し上げます。
  • 月読
  • 2014/11/19 10:21 PM
>月読さん

ご指摘ありがとうございました。
早速訂正させて頂きました。

また不備な点がございましたら、ご連絡下さい。
  • Leo
  • 2014/11/20 2:34 PM
この会長のお顔は、拳&#9898;&#65038;伝説に載っていた方ですか?えらく有名な方だったのですね。
  • 木村
  • 2014/11/29 10:36 AM
伏せ字にしたつもりでしたが化けました。失礼しました。
  • 木村
  • 2014/11/29 10:38 AM
>木村さん

そうですね。 蔡長庚先生については、以前書いた「空手チョップ!空手チョップ!!」という記事の後編にも載せていますので、よろしかったらどうぞ。
http://blogs.masoyama.net/?eid=421
  • Leo
  • 2014/12/03 10:11 PM
>Leoさま
どこかで見た記憶があると思ったらやはりこのブログでした!
失礼しました。
  • 木村
  • 2014/12/04 10:18 AM
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