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大山倍達マニアック検定

【レビュー】笠尾恭二著「少林拳血闘録」(1999年)

JUGEMテーマ:格闘技全般
 


 五郎 先生、先生、大変です!
 先生 何ですか、五郎くん、その八五郎のような慌て振りは。
 五郎 とにかく、大変なんです!
 先生 そうですか。 大変なのは分りましたから、さあ、後は頑張りなさい。
 五郎 話くらい聞いてくれても……。
 先生 きみが持ってくる話はね、ろくな事にならない。
 五郎 ぼくのお陰で、何冊も本になったじゃないですか。
 バシーッ!
 五郎 つう(痛)ー! せ、先生。 何ですかそれ! 見た目ポスターなのに、ほら、たんこぶが出来ましたよ!
 先生 え? ああ、そう言えばこのポスターは初回特典版なんで、豪華鉄板仕様でした。 でも、加減したから安心しなさい。 こう、手の内でコントロールするのがポイントなのです。
 五郎 何で先生がF○teネタを使ってるんですか! もういいです…。 いや、大変なんですよ! あのブログ「拳の眼」に出演が決まりました!
 先生 ほう、極真会の大山倍達先生について色々書いているあのブログかね。
 五郎 そうです、あれです。
 先生 五郎くん、私もね、少なからず大山先生に縁のある身です。 空手の道においても同じ松濤館に学び、大学では早稲田の大先輩なのです。 私の学生時代はもう立教の方で道場を持っておられましたが、大山道場に行けば好きなだけ組手をやらせてもらえるという話で、大学空手部の人間で出稽古に行った人もいたくらいでした。
五郎 うう。 先生、非常に興味深い話なのですが、今回は1999年に福昌堂から出した「少林拳血闘録」の紹介を、そのブログのLくんから依頼されていますので、続きはぼくだけにこっそり教えてください。
先生 では、後で居酒屋でこっそり話しましょう。

少林寺血闘録1.jpg



***

 冒頭から済みません。 一度こういうのをやってみたかっただけですw
 今回は1999年に出版された笠尾恭二先生の「少林拳血闘録」。 これを紹介してみようかと思います。
 笠尾先生と言えば学生時代に空手を始め、やがて中国拳法に惹かれ著名な師に学び、整体院を営む傍ら、多くの武術本を出版されていますね。 読んだ事無くても名前だけでも聞いた事ある人はいるんじゃないですかね。
 さておき、冒頭で真似して書いた様に、本書は笠尾先生と五郎くんの中国拳法史を軽妙な対話を戯曲風に書いた物で、当時は結構評判だったかと。
 様々な達人の逸話や伝説を通説や独自の見解で解説する本書はあまり中国拳法に詳しく無くてもサクサクと読めるかと。
 んでは、まず目次から。

第1章    上海のドラゴン

    大事な相談が……
    十四歳の少年拳士
    秘術迎門三腿
    決め手の一撃
    ストリートファイトの仕返し
    上海ドラゴン対ブラックライオンの決戦
    勝利のうた
    華拳入門秘話
    先生を試した入門者
    ロバ車、宙に舞い上がる
    穴を掘れば身が軽くなる
    中央国術館の「暗闘」
    そのときビシバシのにぶい音が
    高官Xの正体

第2章    李小龍の栄光と悲劇

    霍元甲――精武門の英雄
    クイズで勝負を
    インターセプトの極意
    オークランドの決闘
    截拳道の源流
    三人の詠春ドラゴン
    西ドイツの道場破り事件
    ブルース・リー急死の謎を解く
    ドラゴン惜別の詩

第3章    神槍李書文を継ぐ者たち

    こぶと怪鳥音
    李書文の殺人伝説
    『滄県誌』秘録
    スパイ天字一号の正体
    飛鞭李――車引きの達人
    知られざる八極拳士たち
    軍隊八極拳の秘伝
    ラストエンペラーの護衛戦士
    護軍事件の真相
    八極ドラゴン、日本に上陸す
    殷清和三番勝負
    Hジュニアをぶっ殺せ
    やっぱり八極拳は強かった

第4章    山東反逆の拳

    先生、急のご相談が……
    蟷螂拳は山東総合拳法
    蟷螂戦法得意の三手
    開祖王朗伝説
    むかし「王という野郎」がいた
    ドラゴン、反逆の系譜
    義和拳趙三多の戦い
    ズボンのひもが切れました

第5章    少林武僧たちの戦い

    秘術しりもち拳
    仏山第一拳?
    無影脚の使い手
    黄飛鴻ってどんな顔
    少林寺卒業試験
    「頭輩爺」――少林寺の初代師範
    明代少林僧の活躍
    恒林と妙興――近代動乱期の武僧
    少林最後の武僧たち
    将軍になった少林武僧
    夜空に響く気合い

あとがき



 第1章は蔡龍雲という現在の中国拳法でも超大物な先生の逸話や王子平といった達人の逸話を中心にトークを繰り広げています。
 特に蔡龍雲とロシア人ボクサーとの対戦は大々的に行われて写真も残っており、見物ですね。 また、笠尾先生の面白い所は、勝ったという逸話だけでなく、喧嘩の事後処理に多大な経済負担を負ったという話も載っています。

少林寺血闘録2.jpg
蔡龍雲がダウンを奪った瞬間

 ある程度の警察力を持つ国家は、当然の事ながら暴力行為を容認しません。 路上で素性の割れていない者同士の喧嘩ならともかく、名を知られた人間なら何らかの社会的制裁を受ける事になります。
 まぁ…日本の場合、今はともかく、昭和なら「喧嘩両成敗」で1日泊めるくらいで済ます事もありましたけどねw
 また、中央国術館という、中国拳法の統合と革新、そして普及を目的に設立された組織…って言っていいのかな、に初代少林門長として招かれた王子平を巡る権力闘争も興味深かったですねぇ。

少林寺血闘録3.jpg
権力闘争の話が載っている記事

 第2章はブルース・リーとそれにまつわるお話。 霍元甲はブルース・リー主演映画「ドラゴン怒りの鉄拳」(原題:精武門)にて、日本人の陰謀により暗殺された、主人公の師匠として登場している、実在の人物です。 実際に日本人武道家と手合わせをしたそうですが、その直後に急逝。 その為この日本人が毒殺したという風聞が生まれ、この映画の元ネタになっています。
 事実は霍元甲の持病が悪化してこの手合わせから2週間後に亡くなった、という事みたいですが、この辺りの手合わせの内容も詳しく書いてます。

少林寺血闘録4.jpg
ブルース・リーの技法の変化

 そして様々なブルース・リーマニアックトークw 映画「ドラゴン ブルース・リー物語」にも出て来る、伝説的なオークランドの決闘や、リーが遺していた香港時代の日記、死因に関する考察など、興味のある方には面白い内容だと思います。

 第3章。 日本では絶大な人気を誇る八極拳と、多分日本では一番有名な達人、李書文のお話。
 李書文には手合わせした相手を一撃で打ち殺したという伝説がありますが、これを笠尾先生は全否定w 同時代を生きた形意拳の郭雲深(正確には李より年長)が悪人を殺してしまった際に3年間投獄された例を出して、私闘で殺したなら無事で済む訳ないだろうと。 比喩表現を読み手が殺したと解釈したのだろうと書いていました。 まぁ、納得っすねw こう書いてます。

少林寺血闘録5.jpg
松田隆智原作の「拳児」にも登場する「滄県誌」の李書文

先生  勝負としてはたしかに描かれています。 しかし、「殺した」とは書いていない。 「目が一尺ばかり飛び出した」とは書いてありますが、これもそのくらい効いたと解釈すべきです。 私がきみの頭を雑誌でひっぱたいたときだって三センチぐらい飛び出たような気がするでしょう。


 この手の誤解を生みかねない表現というのは今の雑誌のレポートなんかでもありますね。 例えば「ハイキックをまともに食らい2メートルも吹き飛んで、ロープに倒れ込んだ」とか。
 これ、あまり試合を見た事無い人は、漫画みたいにバビューンと人がすっ飛んだと解釈するんじゃないかも知れません。 でも実際にはヨタヨタとロープ間際まで下がってロープに倒れ込んだ事をこう評したり、という事もあります。 あまり映像が見られなかった時代にそういう試合レポートを見て、すげぇ! どんな蹴りだよ! と思ったんですが、後年映像を見たらこんな感じだった、というのは私がリアルに経験した事ですw
 さておき、中国最後の皇帝溥儀を護衛した八極拳士の話なんかも、歴史好きには面白いかと。

少林寺血闘録6.jpg
皇帝溥儀と八極拳士・霍殿閣

 第4章は武田鉄矢で有名になった蟷螂拳と世界史とかでも学ぶ義和団の乱に関するお話。 義和団の乱は英語では"Boxer Rebellion"と言います。 つまり「拳士の乱」ですね。 非常に分かり易いw
 ちなみに八極拳は技のフォームが格好良いですが、個人的に好きなのは蟷螂拳の足払いやテイクダウンの技法です。 空手と非常に親和性の高い技術だと思いますね。

少林寺血闘録7.jpg
蟷螂拳の技法の一つ

 最後の章は、リー・リン・チェイ(ジェット・リー)や日本の少林寺拳法の名前の由来で有名な武術寺、少林寺の歴史。 映画「少林寺」の元ネタになった話や武僧の話など、知られざるエピソードが続々と。
 また、ジェット・リー主演の映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」のモデルとなった黄飛鴻に関するあれこれ。 中国で一番有名な達人じゃないかな? あまり知られて無い気がしますが、ジャッキー・チェンの映画「酔拳」も黄飛鴻の若い頃、という設定になっています(話自体は全くのフィクション)。

少林寺血闘録8.jpg
右から2番目が黄飛鴻の十男、黄漢熙(父そっくりで、現在出回っている飛鴻の写真の主とされている)

 この「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」、本編ではさらりとしか触れてませんが、「月刊フルコンタクトKARATE」の別冊「実戦カンフー読本 功夫天下」で笠尾先生はこう言っています。

先生:恥ずかしながら、とってもおもしろくてね、夢中で見てしまいました。

 中国拳法も興味があっても何から読めば良いか分からない人が多いでしょう。 本書の達人エピソードから入ってもいいんじゃないでしょうか。
 そう言った方にオススメです。


 という事で、笠尾恭二先生の「少林拳血闘録」でした。
 中国拳法を知る、と言っても廉価な総合書というのはさほど多くありません。 いくつか持っていますけど、延々と流派と特色だけを紹介する本なんかもありますが、普通の方にはあまり面白くないでしょう。 本書は多分にミーハー的なところなんでしょうが、近代の達人の逸話を中心に実際に使われた技法や悲しいエピソードなど、メリハリの利いた展開を軽妙な対話でまとめてますので、取っつきやすいと思います。
 そういや、昔はネットでもこういう対話形式のサイトがあったなぁ。 アニメとかゲームキャラのアイコン使って解説するサイトに多かったけど。
 それはさておき、本当は前著の「太極拳血戦譜」から入る方がいいんでしょうが、敢て複数の流派を扱った本の方を先に紹介してみました。
 よろしければそちらもどうぞw
 今回はここまで。 それでは、また。


参考文献:
フルコンタクトKARATE別冊 格闘王9 実戦カンフー読本 功夫天下 福昌堂 1996年
少林拳血闘録 笠尾恭二著 福昌堂 1999年









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コメント
(´・ω・`)大山倍達先生の著作もレビューして欲しいです。
この本にでてくるドイツの襲撃事件も今ではユーチューブで見られますね☆
  • ぬこやなぎ
  • 2015/06/24 6:30 PM
>ぬこやなぎさん

まぁ、その辺はちょくちょくやります。
  • Leo
  • 2015/06/27 4:53 PM
NHKまいにち中国語8月号:少林寺の穴だらけの木の写真と説明〔武僧が指で突く技を鍛えた跡だという〕
ニューヨーク・ビヤー・ジョッキをやはり思い出しました。
  • オルゴール
  • 2015/07/28 9:57 AM
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