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大山倍達マニアック検定

【レビュー】小島一志著「黒澤浩樹―最後の超人伝説」(1993年)

JUGEMテーマ:空手
 

 と言う事で、肘部管症候群になってて薬指とか小指が麻痺してたんですが、だいぶ良くなったので更新です。

 今回はですね、電子書籍が出たので小島一志さんの1993年の著書「極真空手 黒澤浩樹 ―最後の超人伝説―」を紹介しようかと思います。

黒澤浩樹1.jpg

 今も昔も、現役選手の評伝が出るというのは極めて珍しいのですが…というか、極真に関して言えば、現役時代に出た本はこれが唯一かも、というくらい珍しい本ですね。




本書は現在、過去、現在という構成で進行しており、小島さんらしい熱い文体で黒澤浩樹先生について語られていますw
 さて、今の若い選手は黒澤浩樹がどういう選手だったのか? どれくらい知られているかは分りませんが、1984年に第16回全日本大会初出場初優勝、その翌年の第17回は決勝までの6試合で4試合が合わせ一本、1試合が一本、本戦判定1試合という驚異的な攻撃力を見せ圧倒するも決勝では松井章圭に判定で涙を呑む、という実力を披露しました。

黒澤浩樹5.jpg

 その淡々とした闘い方から「格闘機械」という異名が付いたほどです。

 それでは、まず目次から。

序章

第一章    時代
    『三誠時代』の終焉
     (第十六回全日本空手道選手権大会)
    超人登場
    無欲の勝利
    驀進
     (第十七回全日本空手道選手権大会)
    苦杯
    松井章圭
    試合と国際空手道連盟ルール

第二章    極真空手

    空手の沿革
    大山倍達と極真会館
    梶原一騎と空手バカ一代
    虚構と異端者
    黒澤以前――極真会館興隆期
    三誠時代――第一次黄金時代

黒澤浩樹7.jpg

第三章    ストリートファイト
    ぼっちゃん――両親
    少年時代――極真会館入門
    ワル――総本部道場
    東海大学――道場破り
    座間道場と小笠原和彦

第四章    格闘機械
    ファイティング・マシーン
    移籍――初めての挫折
    チャンピオン製造工場・城西支部
    ウェイトトレーニング
    玉木哲
    猛特訓――アスリート

第五章    冬の時代
    転落
    傲慢の代償
    世界の壁
    どん底
    冬の背景
    大山裁定
    謹慎処分
    致命的弱点

第六章    黒澤浩樹
    カリスマ性
    自負――最強の極真空手
    武道空手
    素顔――プライベート

第七章    復活――ゼロからの闘い
    試行錯誤
    第五回世界大会
    悲劇性の背景――競技の質的変化
    スーパースター
    引退――最後の挑戦

終章
    「あとがき」にかえて



 ちなみに電子書籍版では序章の前に「本書の前に――」という序文が追加されています。

黒澤浩樹2.jpg
電子書籍版の目次

 さて、前述した通り、黒澤先生は第16回全日本で優勝と、彗星の如く現われますが、当時の機関誌「月刊パワー空手」を読むと、優勝はともかく、善戦は期待されていたんですよね。 首都圏交流試合で優勝したのがポイントだったのですが、前回の全日本で大西靖人、小笠原和彦という同じ城西支部の選手が優勝した事も影響していたんでしょう。
 で、優勝、準優勝と来て自信満々の黒澤先生ですが、第18回では何と2回戦で飛び膝蹴りを食らい1本負け。

黒澤浩樹8.jpg
第18回全日本にて豊田宣邦の飛び膝蹴りを食らう

 ウェイト制で世界大会出場権利を得て第4回世界大会ではピーター・スミットと大激戦を繰り広げ勝利後に棄権。

黒澤浩樹9.jpg
ピーター・スミット戦

 第20回全日本では吉岡智戦で不可解な後ろ廻し蹴り技ありを取られた後に下段で取り返し、勝ち急ぐ所を上段で敗北。 第21回全日本でもホセイン・サディカマル戦で再延長2-0と旗を取るも、体重判定で敗北。

黒澤浩樹10.jpg

 この際に再試合コールが発生する異常事態になるも、認められませんでした。 その上、試合態度が悪かったとして、1年間の試合出場停止処分。 まぁ、これは黒澤先生自身が書いた「極真魂」を読むと分るんですが、郷田勇三先生を通じて大山倍達総裁にメロン持って行って謝罪し、その年の第22回全日本への出場は認められ、第5回世界大会では第3位に。 と、不運に見舞われ、再び全日本のトップシーンに返り咲くまでが描かれます。

黒澤浩樹11.jpg
第5回世界大会、緑健児に惜敗

 興味深いのは、大山総裁存命時に「大山裁定」に触れ、極真ルールにおける闘い方の変遷を書き、ルールの良さをアピールしつつも批判的に書いたという点でしょうか。 個人的に関心したのは、一本勝ちを狙うスタイルから、ポイント狙いに試合スタイルが変化した事と、いつしか「大山裁定」を行使しなくなった大山総裁について書かれた部分です。 サディカマル戦もそうですが、有名な第5回世界大会のフランシスコ・フィリョVSアンディ・フグ戦。 「やめ」の後に繰り出された上段廻し蹴りが有効かどうかで、また大山総裁の見解で話題になった試合ですが、判定に対して物言いをしなかった事から、「大山裁定」を行使しなかった試合です。 どっちかと言うと「大山裁定」を行使して再試合させなかったようなイメージがありますが、良く考えたら逆なんですよね。

黒澤浩樹4.jpg
第16回全日本決勝、竹山晴友戦

 「大山裁定」とは、決着のついた試合に再延長を命じたり、延長2回までにどちらかに必ず旗を挙げるようにと示唆したり、試合時間を無制限にしたりというケースが殆ど(ひょっとしたら敗者復活も?)で、結果の出た試合に対して何も言わなかったのなら、それは「大山裁定」では無いという事です。 我田引水かも知れませんが、前述したサディカマル戦での再試合コールはこの「大山裁定」を期待した物で無かったか? と小島さんは結論付けてます。

 で、ちょっとえーっと思うのが黒澤先生の幼少期からの話w お金持ち過ぎっすw 親に買って貰った新車(高校卒業前)を暴走族と喧嘩して2週間で廃車にしたり、入会金諸々含めて10万くらい掛かるジムへの入会金を高校時代に出して貰ったり、素行不良過ぎて修学旅行に行けなかったので、その期間に親とハワイに行ったり、これまた高校時代ですが、タクシーで通学しまくったりとやりたい放題w この辺りは前述の「極真魂」とセットで読むと面白いですw

黒澤浩樹6.jpg
第17回決勝、松井章圭戦

 後、第六章が言いたい放題ですw 小島さんが色々と黒澤先生から意見を引き出すんですが、読んだ当時は「これ、いいのかなぁw」と読んでるこっちが不安になるほどの発言が多かったっす。
 当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった元正道会館の佐竹雅昭先生についてもボロクソ言ってますw で、本書ではこう書いてある佐竹先生についての箇所…

 「ルールなんて面倒臭いこと言うと、なんやかんやって言うでしょうから。 何やってもいいと、素手でね、顔叩いてもいいしサブミッションやってもいいですよ。 その代わり素手で徹底して闘うというならばね、非公開の喧嘩でもいいし、人前でやってもいいです。 本当の実戦でやると言うならば自分はどこでも行きます。
 そのことを先日、何かの機会に大山総裁に言ったら、やってもいいけど、その時は禁則だって言われちゃったですけどね(笑)。 でも本当に、いつでもやってやる用意はありますから」


 という部分ですが、「極真魂」にはこう書いてありました。

黒澤浩樹3.jpg

 「総裁、正道会館が自分の道場の近くにできました」
 「ああ、そうかね」
 丁度、正道会館が東京道場を高田馬場に出した頃だった。
 「自分、何回か佐竹(雅昭)さんと、すれ違ったことがあるんですけど、多分、向こうは気付かなかっただけかもしれませんけど、自分は頭を下げたのに知らんぷりされました」
 すると総裁は俺に目を向けて鋭く言った。
 「君、何故、挨拶をするんだ」
 いや、一応、お互い空手家ですから、挨拶は……」
 俺の言葉は遮られた。
 「君ねえ、そういう時は見た瞬間に叩け! のばしなさい」
 俺は、啞然として総裁の言葉を聞いていた。
 「君がその場で、路上で佐竹をのばしたら、とりあえず、私は君を破門にするよ。 その代わり1年後には必ず五段にする、間違いなく。 だから、君ぃ、頑張りたまえ」



 黒澤先生を通じて、当時の極真が抱えるルール上の問題点と熱い思いが詰まった本書。 今から読めば時代も違いますし、違和感もあるでしょうが、旧き良き極真に思いを馳せるのもいいかも知れませんね。


 と言う事で、小島一志さんの「極真空手 黒澤浩樹 ―最後の超人伝説―」でした。
 当時はビデオ版も作られ、続編としてその後の黒澤浩樹を追った「ラストファイト」も出版されるくらいだったので、かなり売れた本だったと思います。 小島さんの過剰なまでの思い入れがありましたけど、何人も粉砕する様な黒澤先生の下段蹴りに憧れた人も多かったんじゃないでしょうか。
 私見で言えば、下段対策で接近戦を多用され、右下段をクリーンヒットさせる機会が減った頃が黒澤先生の低迷期、所謂「冬の時代」だったと思います。 その後左の中段廻し蹴りを良いタイミングで出せる様になってから復活した様な印象がありますね。 ただ、本人が本書で明らかにしている通り、傲慢になっていたが故の敗北、それが許せない自分の噛み合わない歯車が、強引な攻撃をさせていたのかも知れませんけど。

 あ、せっかくなんで、電子書籍版の入手方法をw
 本書はAmazonが展開するキンドルという電子書籍リーダーを使って読みます。
 使い方は簡単。
1)まずAmazonに登録してアカウントを取得。
2)次にパソコン用かandroid用かiPhone用のいずれかのソフト(アプリ)をダウンロード。

パソコン用
android用
iPhone(iOS)用

3)インストール後にログイン。
4)起動したソフト内で検索して購入するか、Amazonにて直接購入(購入先は下記参照)。


 これで自分が所有している端末からなら、どれからでも読めます。 読んだ所まで保存されるので、別の端末で引き継ぐ事も出来ますね。
 ちなみに以前紹介したジャン・ジャービス先生の"Kurosaki Killed the Cat"も最初はここで購入しましたw ただ、当時はパソコンで読めなかったのでスマホで読んでたんですが、横にしないと読み辛かった事から、紙の方を買い直したんですが、今ならパソコンで読めるので、ちょっと勿体なかったかもです。
 今回はここまで。 それでは、また。


参考文献:
極真空手 黒澤浩樹 ―最後の超人伝説― 小島一志著 池田書店 1993年
極真魂 黒澤浩樹著 双葉社 2001年

関連リンク:
ジャン・ジャービス著"Kurosaki Killed the Cat"(2010年)








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コメント
小島さんの著書は、なにか懐かしい感じがします。
大山先生のコメントはまさに“大山倍達”という感じですね。
お若いときに、舐めた態度の、山田辰雄先生のお弟子さんだったかを、半殺しにしたの、しようとしたの、というエピソードが、思わず思い出されました。
  • とおりすがりのマニア
  • 2015/09/01 9:00 PM
(;´・ω・)いまごろに電子版が何故…………笑
確か最後は虹が空に射したはずだけど、いまの状況から省みると実に奥深しい、というかww
  • ぬこやなぎ
  • 2015/09/04 1:26 AM
(真面目な話です)
(・ω・)顔面撃つキックのチャンピオンでも、レスラーでも、この時期の黒澤氏と闘ったら敗北する確立はかなり高いと思います。
一志風にいえば「黒澤の前には立っていられなかったはずであるw」

この人の強さをワンマッチ等を組んで維持するサポートを誰もしてあげられなかったのが惜しいです。
電子版リリースしても小島さんは黒澤さんにマネーを支払わないなら浜田省吾の歌でもてなせといいたいです☆
  • ぬこやなぎ
  • 2015/09/04 1:41 AM
黒澤選手の試合は何度か見ましたが、ローキックのスピードが速くて驚きました。あと七戸選手と試合したときも、指骨折して大変なことになってるのに普通に戦ってたことに驚きました。関係ないけどタレントと付き合ってた噂がありましたね。
  • やいや
  • 2015/09/06 3:16 PM
>とおりすがりのマニアさん

松田隆智先生が語ってた話ですかね。 あれは氏名を明かさずに、合気道もやる当時有名な空手家の弟子、という話じゃなかったかな。

>ぬこやなぎさん

第17回全日本の時は並み居る選手を圧倒していましたからねぇ。
是非とも増田先生との対戦を見たかったw

数年前に館の大会で見た時は、黒澤先生と小島さん、横に座って話してましたよ。
小島さんが
「2人でサインするよー。 いいじゃん、黒澤さんもサインしなよ」
と促して、私とか空手古書道連盟の総裁がサイン貰ってましたw

>やいやさん

正確には骨折では無く、開放性脱臼ですね。
それにしても、一番顔面殴打の反則を食らった選手って、黒澤先生な気がします。
  • Leo
  • 2015/09/06 6:55 PM
>是非とも増田先生との対戦を見たかったw

このお二人のスパーリングを合宿で見ることができるのが
城西支部生の特権でしたw
黒帯がずらっと並んで順番に回るんですが、
二人が近づいてくると周りで見てる人たちに緊張感が・・・w
だって世界大会の決勝でもおかしくない組み合わせでしたから。「
  • 北の狼
  • 2015/09/07 3:07 AM
 ご無沙汰しております。

初出場で初優勝、派手な全日本デビューでした。

最強扱いされながらも二度と全日本優勝できなかったのは
いろいろな要因があると思いますが

やはりあの時期の極真選手層全体の急速なレベルアップが一番の要因かと思っています。

それと
Leoさんのご指摘通り顔面もらいすぎなのが心配でした。
あのレベルの人たちのパンチ力は相当すごいでしょうから。

とはいえ倒しに行くスタイルはやはり嬉しいです。



 ひさしぶりに読み直してみます。

  • もん爺
  • 2015/09/15 12:10 AM
「君がその場で、路上で佐竹をのばしたら、とりあえず、私は君を破門にするよ。 その代わり1年後には必ず五段にする、間違いなく。 だから、君ぃ、頑張りたまえ」

この部分、私流に訳すとすれば
「タマァとって来んかい。んで、そのまま自首せい。ムショから出て来たあかつきにゃあ、組の幹部として迎えたるでェ。」にしかw
  • 夏草
  • 2015/09/17 9:01 PM
Leoさん、コメント、ありがとうございます。

あれ? 相手方の出自は伏せられていたでしょうか?

確か、自分はこの話から「ああ、これが『空バカ』の由利辰郎のエピソードになったんだなぁ」と思った記憶でしたが。
  • 通りすがりのマニア
  • 2015/09/20 6:50 PM
>北の狼さん

まぁ、地下でスパーしてる映像は見た事あるんですけどねw

>もん爺さん

お久しぶりっす。
大会としては、この80年代後半から90年代前半に掛けて、安価なビデオ撮影、ウエイト制が始まったのもあるんでしょうが、個人の技術から普遍的な技術へのシフトによる、全体レベルの底上げが物凄かったですね。
名選手を輩出する名門道場が固まってきた時期でもありますし、選手として活躍した世代の支部長の貢献もかなりあるんでしょうねぇ。 本書でも山田先生の話が面白かったし。

>夏草さん

大山総裁もどこまで本気か分からないですからねぇw

>通りすがりのマニアさん

そういう風には考えて無かったっすねぇ。
由利辰郎、見た目は映画「姿三四郎」に登場する檜垣源之助にそっくりですがw
  • Leo
  • 2015/09/23 11:46 PM
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